2018年朝鮮半島、新たな時代へ

2018年、朝鮮半島をめぐる環境は大きな地殻変動を起こした。

民族自主、民族自決の新時代へ

朝鮮の金正恩国務委員長の新年の辞を皮切りに、南北は和解協力を一気に加速させた。

歴史的な4.27板門店南北首脳会談、電撃的な5.26板門店南北首脳会談、画期的な9.18平壌南北首脳会談を経て、南北は「民族自主」、「民族自決」を前面に押し出して軍事、経済、文化、スポーツ、芸術などの各分野での交流、協力を活発に推進、目まぐるしく繰り広げられた。

特に、南北は軍事分野で一切の敵対行為の中止を合意、板門店DMZの非武装化と監視所の撤去、軍事道路の南北連結をはじめとする具体的措置を着実に進め、11月1日からは一切の軍事的敵対行為を中止した。 「朝鮮半島で戦争は二度と起こらない、起こさせない」という民族の意志を広く内外に知らしめた。

12月26日には南北の鉄道・道路の連結着工式が開かれ、南北と中国、ロシア、モンゴルの鉄道を結ぶ朝鮮半島とユーラシア横断鉄道を繋ぐ夢のプロジェクトが稼働することになった。

30日には、金国務委員長から「南北の両首脳が来年も朝鮮半島の平和と繁栄のため共にしていこう」と、米国からの圧力の前に「民族自主」が揺らぎがちな南側を鼓舞する親書が文大統領に送られた。

韓国側が環境を十分に整えることが出来ず、金委員長の年内のソウル訪問こそ叶わなかったが、南北は着実に新時代へと踏み出した。 この歩みは2019年も途切れることなく続く。

「不倶戴天の怨讐」からの転換

南北の「民族自主」の意志と「国家核武力」を完成させた朝鮮の戦略的地位の変化は、民族の分断と戦争の元凶であり、70年ものあいだ朝鮮の孤立圧殺を図ってきたアメリカに、対朝鮮政策を転換せざるを得ない状況をもたらした。 対立と軍事的緊張が極限まで高まった2017年からすると、到底考えられない程の劇的な変化だ。

朝米は6月12日、史上初となる朝米首脳会談をシンガポールで行った。 「積年の宿敵」「不倶戴天の怨讐」として対峙してきた両国が、「新しい朝米関係の樹立」に向けて行動することを内外に示した。

新しい朝米関係は、軍事的敵対を解消し将来的に対等な立場で国交樹立を目指すものだ。 朝鮮の建国以来、侵略と圧殺の対象としてきた米国の現職大統領が両国の国旗の前で朝鮮の最高指導者と握手した。 その歴史的意義は大きい。

但し現状を見ると、朝米交渉は膠着状態にある。 それは、米国が「行動対行動」の原則を守らずに朝鮮に一方的な非核化を要求しているからに他ならない。

朝鮮は既に核実験とICBM発射実験の中断、核試験場の破棄など、朝鮮半島の非核化に向けた先制的措置を取っており、米国側にも行動で答えるよう促してきた。 米国は軍事演習の中止、縮小こそ行ってみせたが、具体的な措置を取らずに朝鮮の先非核化だけを要求、それどころか「人権問題」などを持ち出して、制裁の維持と強化を図ろうとしている。

米国内では、朝米関係の改善を推し進めようとするトランプ大統領と、その意に反し従来の対朝鮮政策に固執する国務省をはじめとする集団との間に乖離がある。

朝鮮は絶妙なタイミングで金国務委員長の親書を送るなど、「我々はトランプ大統領に対する信頼心をまだそのまま保っている」とし、トランプ氏を鼓舞している。 トランプ氏もまた、自身のTwitterなどでそれに応え自身の意志を示している。

2019年1月か2月に2回目の朝米首脳会談の開催が取りざたされている。 紆余曲折あれど、朝米は新たな関係樹立へと進む。

伝統的友好親善の強化・発展へ

朝鮮の積極外交攻勢は、冷却状態にあった「伝統的友邦」との友好親善を修復し、より強化発展させた。

金国務委員長が3月、5月、6月と3度にわたり中国を訪問し習近平国家主席と会談、虚心坦懐に意見を交換したのを皮切りに、朝鮮と中国は各分野、各レベルの活発な往来外交を展開、両国の戦略的意思疎通の強化と伝統的親善の発展をを内外に示した。

朝鮮・金正恩

歩きながら談話する朝中首脳

また、ロシアはUNなどで再三に渡り、朝鮮への不当な経済制裁を解除すべきと訴えかけるなど、朝鮮半島の非核化に向けた朝鮮の立場と平壌合意書に反映された南北の民族自主精神の支持を表明した。

中国とロシアは10月、朝鮮と朝中露3ヶ国外務次官会談を行い、朝鮮に対する「UN経済制裁」の解除を共同で求めた。 それまで、中国とロシアが個別に制裁緩和の必要性に言及したことはあったが、3国がそろい踏みで「一方的な制裁に反対する共同の立場を確認した」と表明した意味は大きい。 UNの経済制裁に対し「やむなし」の立場を取ってきた「朝鮮の伝統的友邦」である中露両国が、朝鮮の立場を明確に支持したかたちだ。

朝中露3国は共同声明で「朝鮮半島問題は、平和的かつ政治外交的に解決する以外、代案がないという立場を共有した」「関係国の対話推進の努力を高く評価し、相互の憂慮の解消と関係正常化のための朝米・南北会談に支持を表明する」とした。

情勢の変化に対応できずじまい

朝鮮半島をめぐる国際環境が大きく変わる中、関係国の中で日本だけがその変化に対応できていない。

安倍首相は金国務委員長と会う用意があるといいながら、結局、何ら具体的措置を取ることが無かった、否、出来なかった。

朝鮮は日本に対する論評や談話を発表する時、「日本」と「安倍一派」を区分して使って来た。 つまり、朝鮮は政権が代わればいつでも対話に応じる用意があるとのシグナルを発しているわけだ。 これをどう判断するかは、日本自身にかかっている。

いずれにせよ、2019年も大きな変化と躍進を見せるであろう朝鮮半島から目が離せない。

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。