M.K通信 (3)太陽は西から昇らない

「終戦宣言について何かを話すにはあまりに早い」「(終戦宣言をするには)北朝鮮が非核化に向けて相当な動きを見せるべきだ」(ハリス米駐韓大使の発言、13日、6日)

「われわれは平和体制(構築)を支持しているが、主要な焦点は朝鮮半島の非核化だ」(米国務省のナウアート報道官、14日)

このような「終戦宣言時期尚早論」、北朝鮮の「先非核化論」は主に国務省ラインから発せられている。

また、国務省、財務省、国連大使などは北朝鮮に対する制裁の強化に動き出している。

米国務省は14日(現地時間)、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外交部長官とポンペオ米国務長官が電話会談し、北朝鮮が非核化に取り組み、「最終的かつ完全に検証された非核化(FFVD)」が実現するまで、圧力をかけ続ける必要性について話し合ったと発表したことに見られるように、南北対話、和解と協力を進める文在寅政権に露骨な圧力を加えている。また財務省は15日、北朝鮮に対する制裁に違反し、「酒や石油精製品の輸出に関与」したとして、中国やロシアの企業などを制裁対象に追加した。国連安保理も「北朝鮮の制裁逃れ」を云々しながら制裁強化を叫んでいる。さらに、北朝鮮の建国記念日に政府高官による代表団を派遣しないよう各国に圧力を加えたり、スポーツ競技のユニホーム提供まで制裁違反とする異様な光景が繰り広げられている。

北朝鮮に「先非核化」を飲ませるために、必死に圧力を強めようとしているのだろう。

ポンペオ長官率いる国務省が求める一方的な「先非核化」は、核リストとロードマップの提出、核弾頭の引き渡しなどと、伝えられる。

事実なら常軌を逸しており、北朝鮮が「強盗のような要求」と反発するのは当然と言わざるを得ない。

国務省の動きは、ブュッシュ政権のCVID、「強硬関与」をなぞっているように見える。

M.K通信(2)で指摘したようにCVIDは北朝鮮の武装解除とレジームチェンジを狙ったものだ。

6者会談でブッシュ政権が「先核放棄」を要求、北朝鮮が「行動対行動」を掲げ激しく対立したことはまだ記憶に新しい。

ポンペオ国務長官がなぜ現時点で、ブッシュ政権の「強硬関与」を踏襲するかのような、無謀で失敗に帰した強硬策を掲げるのか理解しがたい。CVIDをFFVDと言い変えたからといって「先非核化」に固執するのであれば言葉遊びに過ぎない。

北朝鮮の一方的な非核化を否定し、段階的で同時行動の原則で朝米関係の改善と朝鮮半島の非核化を進める6.12朝米合意に反していることは明らかだ。

「強盗のようだ」と非難する北朝鮮が「先非核化」に応じることはない。

太陽が西から昇ることはないということを肝に銘じるべきだ。

朝米交渉が膠着状態に陥ってる中で、これを打開するための第3回南北首脳会談の開催が決まった。

南北対話を進展させ和解と協力を進めようとするのは民族の要求だ。米国が力づくで妨害しようとするなら大きな反発を免れないだろう。

また、北朝鮮と国境を接する伝統的な友好国の中国、ロシアも朝鮮半島の平和体制構築を支持、制裁の解除を求めている。国際的にみても朝鮮半島での対立と紛争は支持を得られず、朝米対話による平和体制が求められており、北朝鮮との関係改善を模索する国が増えている。

注目されるのは、ジョセフ・ユン前米国務省北朝鮮担当特別代表が15日(現地時間)、非核化と関連した朝米の膠着状態を突破する手段として、ワシントンと平壌(ピョンヤン)に「相互連絡事務所」を設置することを提案したことだ。

ユン前代表は同日、「米国と北朝鮮がいかに失望のサイクルを打ち破ることができるだろうか」という題名のワシントンポストへの寄稿文で、シンガポール朝米首脳会談以降、両者がそれぞれ「段階的・同時的解決策」と「完全かつ即刻的な非核化」を主張して対立する状況に言及し、「危機のサイクル」に陥る結果を避けるため、「米政府は外交的過程の幅を広げなければならない」と指摘、その最も効果的な方法として、「平壌とワシントンに相互外交連絡事務所を設置すること」を提案した。朝米交渉の歴史を熟知している元担当者ならではの穏当で適切な意見ではないか。

朝米関係改善への流れを押しとどめようとするのではなく促進させていくべきであろう。(M.K)

 

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。