M.K通信 (10)「わが民族の運命はわれわれ自身で決定する」

「わが民族の運命はわれわれ自身で決定する」

文在寅大統領が19日に5.1競技場で行った演説の一説だ。

文在寅大統領演説のこの一説は、もちろん9月平壌共同宣言でうたわれている「民族自主と民族自決の原則」に基づいたものだ。

しかし「民族自主と民族自決の原則」は、南北会談が行われるたびにうたわれる枕詞でも、単なるスローガンでもない。

18日から20日にかけて行われた会談で南北の両首脳は、「わが民族の運命はわれわれ自身で決定する」という強い意志を内外に誇示した。

9月平壌共同宣言で南北は、「非武装地帯を初めとする対峙地域での軍事的敵対関係の終息を、朝鮮半島全地域での実質的な戦争危険の除去と根本的な敵対関係の解消」につなげて行くことにし、「板門店宣言軍事分野履行合意書」を平壌共同宣言の付属合意書として採択した。

米国が終戦宣言に否定的立場を示している中で、米国に一歩先んじて「朝鮮半島を恒久的な平和地帯にする為の実践的措置を積極的に取ることにした」のである。このような軍事分野の合意を第1条に盛り込んだ平壌共同宣言を韓国側は「実質的な朝鮮戦争の終戦宣言」(青瓦台の尹永燦国民疎通首席秘書官。19日午後の記者会見)と評価して見せた。朝鮮戦争の終戦は民族の強い意志であることを示したといえよう。

南北の軍事分野での合意について一部では「韓米軍当局間の緊密な協議なしに進められた」と指摘されており、米国防総省は「合意書の内容は同盟である韓国と徹底的に検討して議論されるだろう」(20日)とコメントしているという。米国防総省は南北合意を尊重し、平和に逆行すべきではない。

また南北の首脳は朝鮮半島の非核化問題においても一歩踏み込んだ合意を成し遂げた。

両首脳は平壌共同宣言で「朝鮮半島を核兵器と核の脅威がない平和の地」にするために「共に緊密に協力」していくことに合意したのである。朝米間で解決されるべき朝鮮半島の非核化問題において「協力」を約束したのははじめてだ。文在寅大統領が「わが民族の運命はわれわれ自身で決定する」精神に基づき一歩踏み出した格好だ。

「朝鮮半島を核兵器と核の脅威がない平和の地」にするためには、北朝鮮の一方的な非核化だけでは片手落ちだ。米国の核の脅威も除去されなければならない。金正恩委員長と文在寅大統領がこの点で認識を共にし「緊密に協力」することにしたことの意味は大きい。

文在寅大統領は平壌首脳会談後の記者会見で、非核化問題で共同宣言に反映されなかったことまで含めてトランプ大統領と会談する旨あきらかにしている。文在寅大統領は単純なメッセンジャーや仲介者ではなく、朝米で非核化問題を進める金正恩委員長のパートナーとして役割を果たしていくことになるのではないか。

平壌首脳会談では平和問題とともに、共同繁栄のための経済協力等々で一歩も二歩も進めた合意を導き出した。

また文在寅大統領が5.1競技場で15万人の群衆を前に演説したかとおもえば、民族の精気が宿った白頭山に登頂すなど、従来の南北関係からみれば驚くべきサプライズが演出された。

さらには、金正恩委員長の近い時期のソウル訪問にも合意した。金正恩委員長のソウル訪問が実現すれば、和解と協力、平和と共同繁栄の道のりに重大な転機をもたらすことになろう。

平壌首脳会談での画期的な合意と一連の出来事は、両首脳間に「わが民族の運命はわれわれ自身で決定する」という確固とした意志と信念、深い信頼で結ばれた強いきずながあってこそはじめて可能ならしめた。

「わが民族の運命はわれわれ自身で決定する」という、両首脳の意志と信念は朝鮮半島非核化をけん引し、平和と共同繁栄を担保する決定的な力であろう。

平壌での南北首脳会談の結果は、北朝鮮のみならず韓国国民の大きな支持を呼んでいる。

韓国の世論調査会社リアルメーターは、南北首脳会談について、韓国民の約7割が肯定的に評価しているとする世論調査の結果を21日に発表した。

調査は平壌共同宣言の発表翌日である20日にを実施された。調査対象者の71・6%が会談を肯定的に評価し、否定的評価は22・1%だったという。

また韓国ギャラップが21日に発表した世論調査結果によると、文在寅大統領の支持率は61%で、前週に比べ11ポイント上昇した。同社は「大統領の支持率が上昇したのは、調査期間中に平壌で今年3回目の南北首脳会談が行われた影響とみられる」と説明した。

和解と協力、平和と共同繁栄が民族の願いであることの証左だ。(M.K)

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。