「『包括的対北朝鮮制裁』、道徳的な支持を受けられない」 専門家が指摘

昨年、朝鮮の穀物収穫量が10年ぶりに最低水準に低下したのはUNの「制裁」が原因であり、「食糧流入までも遮断するという論理は道徳的な支持を受けられない」と専門家が指摘している。

ロンドン大学のヘイゼル・スミス東洋アフリカ大教授が、2016年からUNが朝鮮に「包括的な経済制裁」を加えたため、油類の輸入に大きく依存している農業分野の打撃が大きかったという分析を示した。

スミス教授は朝鮮の安全保障と人道問題を30年間研究してきた人物で、1998年から2001年まで朝鮮に常駐してユニセフとUN開発計画(UNDP)で活動した経験がある。

スミス教授は「1990年代の飢饉以後、朝鮮の農業生産量が大きく増えて2012年と2013年ぐらいには国民を養うことができた。 食料輸入を続けてはいたが、国民の栄養状態を改善することができていた。  2016年にUNの『包括的対北朝鮮制裁』が始まり、特に油類制裁が開始した。 世界の全ての国の農業分野は油類に依存している。 肥料、殺虫剤に油類が入るし農業用水を汲み上げるにも燃料が必要だ。 リビア、シリア、イランとは異なり、朝鮮は自国で石油や天然ガスを生産していない。 よって、朝鮮の住民がいくら劣悪な生活条件でも生き残る方法を身につけたとしても、農業分野は外部から油類を持ち込まないと支えることができない。」と主張した。

スミス教授は、「油類の流入が減ると、その直接の結果として昨年、農業生産が急減した。 2500万人の朝鮮住民の全員が少量摂取するとした場合500万tの穀物が必要だが、朝鮮の食糧生産量不足分は50万tレベルであり輸入で充当が可能だった。 昨年の収穫量は150万tが不足しており、これは人道支援や慈善基金で埋めることができない量だ」と指摘、収穫量の低下がUN制裁の直接的影響によるものとの見解を示しつつ、「興味深い部分は、まだ『飢餓』についての報告がないという点だ」と言及、これは「UN制裁」下でも朝鮮に食糧が流入しているという意味だと語った。 また、「今年の初め、朝鮮当局は過去に経験した極端な飢饉状況が繰り返されるかもしれないと内部的に判断し、個々の国と食糧支援を協議しようとした。 ところが、飢饉状況が起きなかったため、朝鮮当局も外部の専門家と同様に驚いたようだ」と言及した。

スミス教授は、UN安全保障理事会が「特定分野の制裁」を決議したというがそれは違うと指摘、「特定分野だけの制裁ではない。 米国務省の目標は、朝鮮の輸出の90%、輸入の90%を中断させることだ。 すべての分野が影響を受けるという意味では「分野別」制裁だ。 実際、制裁対象である繊維分野は朝鮮の核プログラムと何の関係もない。 2016年に朝鮮を対象とした『包括的制裁』はUNレベルでは15年ぶりに初めて施行されたものだ。 UNは先のハイチとイラクでの経験をもとに、『包括的制裁』が罪のない住民と子供たちに直接的な打撃を与えると判断したはず」とUNの「包括的制裁」を暗に批判した。

朝鮮の人道主義の危機が、自国民の安寧より大量破壊兵器と弾道ミサイルプログラムに優先順位を置いた政権のせいだとする米国務省の主張に対し、スミス教授は、「国際法によると、朝鮮政府には自国民の福祉のための責任があり、同時に国際法は、UNや他の国々にも人道主義の状況の悪化を防ぐ責任を明示している。 米国務省が主権国家の責任を指摘したのは確かにその通りだが、他の国の責任を敢えて外している」と指摘した。

スミス教授は「米国政府やUNは、制裁が核放棄という目標をどのように達成するかという『ロードマップ』を提示していない。 朝鮮には政治的プロセスに影響を与える中間層がない。 イランの場合、制裁が中産層にダメージを与え中間層が抗議すると政府が圧力を受けるが、朝鮮は異なる。 朝鮮の2500万人の住民がすべて死亡するよう支援を遮断すれば核危機がなくなるという論理だが、食糧流入までも遮断するという論理は道徳的な支持を受けられないだろう」と語った。

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。