「終戦宣言は信頼構築の優先的要素」米国の真摯性を推し測る朝鮮

6月12日史上初の朝米首脳会談が開催されてから1か月になろうとしている。 共同声明を履行するための朝米高位級会談が6日~7日に平壌で行われたが、会談後の朝米双方の反応は対照的だった。

ポンペオ米国務長官は「大きな進展があった」「非常に生産的だった」とのコメントを残したが、朝鮮側は間髪入れず外務省スポークスマン談話を発表、「初の朝米高位級会談で現れた米国側の態度と立場は実に残念極まりないものであった」「米国はわれわれの善意と忍耐心を間違って理解したようだ」と米国側の対応を批判した。

そもそも、朝米首脳会談共同声明に盛り込まれた核心は「新たな朝米関係の樹立」「恒久的で安定的な平和体制の構築」「朝鮮半島の完全な非核化」だ。 高位級会談では当然これらの内容について同時に協議されるべきだった。

だが今回の会談では、アメリカ側の準備不足と慢心が露呈する結果となった。

朝鮮側は会談で、①朝米関係改善のための多面的な交流を実現する問題、②朝鮮停戦協定締結65周年を契機に終戦宣言を発表する問題、③ICBMの生産中断を物理的に実証するために大出力エンジン試験場を廃棄する問題、④米軍遺骨発掘のための実務協商を早急に始める問題を討議することを提起したが、これに対しアメリカ側は「核廃棄プログラムのタイムスケジュール」にのみ固執し続けた。

朝鮮側は当然、「情勢の悪化と戦争を防止するための基本問題である朝鮮半島の平和体制構築問題については一切言及せず、すでに合意された終戦宣言問題までいろいろな条件と口実を設けて遠く後回しにしようとする立場を取った」と厳しく批判した。

朝鮮は「終戦宣言を一日も早く発表する問題について言えば、朝鮮半島で緊張を緩和して恒久的な平和保障体制を構築するための初の工程であると同時に、朝米間の信頼構築のための優先的な要素であり、ほぼ70年間持続してきた朝鮮半島の戦争状態にピリオドを打つ歴史的課題として北南間の板門店宣言にも明示されている問題であり、朝米首脳会談でトランプ大統領がより熱意を見せた問題である」と指摘している。

アメリカ側には、米韓合同軍事演習の中止を朝鮮に対する「大きな貸し」と捉え、それで朝鮮側が譲歩するものと思い違いをしたフシがある。 これは明らかな慢心だろう。

また、関係改善と平和体制構築のための具体的提案を準備していなかったのは痛手だ。 仮にアメリカが終戦宣言に前向きな態度を示し、何らかのアクションなりを示していたならば結果は違ったはずだ。

殊に「朝鮮半島の非核化」は相互信頼のもと段階的、同時的、行動対行動の原則で進めていくことが既に確認済みでポンペオ長官も認めている。 朝鮮側の一方的な譲歩、現実的に実現不可能なCVID方式など有り得ないし非現実的だ。

朝米交渉は本質的には両国の関係正常化問題と言える。 「北の非核化」にのみを焦点とした従来の朝米交渉はシンガポールでの首脳会談を機に消え、今は完全に別の新しい段階にシフトしている。

米国内ではメディアと軍産複合体代弁者らが殊更CVIDに固執し、端から高位級会談が失敗するものと喧伝し制裁と圧力を強化しなければならないと囃すが、朝米交渉が決裂したわけではない。

今会談で朝米双方は、非核化の実現と検証に向けた核心的事項に関する複数の作業部会を設置することで一致し、米兵遺骨返還やミサイルエンジン実験場廃棄などを協議するための実務会談を開くことで合意、遺骨返還問題を協議するため12日に板門店で朝米関係者が協議する事になっている。

何よりも、朝米が双方の首脳宛ての親書を交換していることが物語っている。

今後、朝米交渉の成否は全的にアメリカの出方にかかっている。 朝鮮はアメリカに対しヒントと答えまで示し「われわれは、トランプ大統領に対する信頼心を今もそのまま持っている。とシグナルを送っている。 アメリカの動向が注視される。

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。