M.K通信 (6)終戦宣言は不可避だ

シンガポールでの朝米共同声明にもかかわらず、米国務省は「先非核化」に固執し朝鮮戦争の終戦宣言に否定的立場を貫いている。

朝米交渉が一時的にこう着状態におちいっている状況でトランプ大統領はポンペオ国務長官の訪朝を延期させたが、これを機会に朝米対話を妨害し、対立を煽る強硬派の動きが露骨化している。

ポンペオ長官の訪朝中止の原因が、「好戦的」で、米国を「恐喝」する北朝鮮の「書簡」にあると矮小化する、米大手紙の報道に表れている。 米国が北朝鮮に「恐喝」される国なのかと、その過激な表現に失笑を禁じ得ない。 明らかにトランプ政権内の強硬派によるリークに基づく報道で、政権内の少なからぬ混乱と、強硬派の必死の抵抗を物語るものだ。

「先非核化」に対する北朝鮮の姿勢はすでに明らかになっている。 去る7月6、7の両日に行われた初の朝米高官会談の結果に対して北朝鮮外務省スポークスマンが談話を発表して「米国側はシンガポール首脳の対面と会談の精神に背き、『完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)』、申告、検証だのと言って、一方的で強盗さながらの非核化の要求だけを持ち出した。 情勢の悪化と戦争を防止するための基本問題である朝鮮半島の平和体制構築問題については一切言及せず、すでに合意した終戦宣言問題までもあれこれ条件と口実をつけて後回しにしようとする立場を取った」と指摘、「朝米間の信頼が強固にされるどころか、むしろわれわれの確固不動な非核化意志が揺らぎかねない危険な局面に直面するようになった」と、憂慮と危機感を表明したのは周知の事実。

ネオコンおよび民主党の強硬派は、CVIDを拒否し終戦宣言を求める北朝鮮の姿勢を米国に対する「恐喝」で「好戦的」だと歪曲誇張して反トランプキャンペーンに利用しようとしているようだ。

トランプ大統領はシンガポール首脳会談とそれを前後した時期に、終戦宣言に対する強い意欲を重ねて表明している。

このような姿勢は安全保障の提供と朝鮮半島の非核化を核心とする朝米共同声明にも反映されている。

戦争状態を維持したまま安全保障を語れないことは火を見るより明らかだ。 また安全保障が担保されないままでの朝鮮半島の非核化は絵に描いた餅にすぎない。

北朝鮮は、自らが開発した核兵器は、米国の核の脅威に対抗する自衛手段であることを再三にわたって表明している。 米国による核の脅威を温存したまま北朝鮮に非核化を求める主張は朝米共同声明に反する。

「先非核化」論はブッシュ政権時の「先核放棄」論を彷彿させる。 6者会談が破綻したのは、ブッシュ政権が「先核放棄」に固執して「行動対行動」の原則を拒否したためだ。 またオバマ大統領も「北朝鮮政権は遠からず崩壊する」と自らが語り、対話を拒否、「戦略的忍耐」を掲げ、核爆弾の投下訓練を強行するなど核恫喝を繰り返した。

北朝鮮の「国家核戦力の完成」は米国の強硬路線の破綻を意味する以外の何者でもない。

終戦宣言に背を向け、北朝鮮の一方的な非核化を要求することは、過去の教訓に学ぶことを拒否する愚かな主張であり、それはトランプ大統領の意向にも反しているようだ。

いったいどう読めば、朝米共同声明が北朝鮮の一方的な非核化要求につながるのか不思議でならない。

オバマ政権下で米国務省北朝鮮担当特別代表を務めたジョセフ・ユン氏は「一方的な非核化要求だけに固執するのは、(朝米合意が)きちんと作動していない(こと)」(ワシントンポストへの寄稿文、8.15)と指摘、「相互連絡事務所」の設置を提言した。また同氏は朝日新聞のインタビューに答え「米朝首脳会談の共同声明には終戦宣言(に向けた合意)も含まれていると思う。・・・素直に言って、終戦宣言は実行されるべきだと思う」(同紙8月31日付)と述べている。

朝鮮戦争の終戦宣言は不可避だ。

早期の終戦宣言を約束した南北の板門店宣言は、朝鮮半島の平和と共同繁栄を望む南北の国民の意思を反映したものだ。

ネオコンおよびリベラルホークなどの強硬派は、韓国で自らがよって立つ保守強硬派が急速に衰退していることを直視しなければならない。

朴槿恵前大統領を弾劾に追い込んだ、連日100万人にのぼるローソクデモは韓国保守強硬派の地盤を瓦解へと追い込み、文在寅政権の平和と民族の共同繁栄への試みは圧倒的な支持を獲得している。

ポンペオ長官の訪朝延期を契機に米国は南北で合意している開城連絡事務所の設置に反対するなど圧力を強めている。 また南北の鉄道を連結するための調査を目的にした、西海線鉄道の試験運行を阻止するなど、南北協力を進めようとする文在寅政権に対する圧力が日増しに露骨化している。

韓国民の意思を踏みにじる米国の傲慢な行為は、平和と共同繁栄を望む南北の民族感情を逆なでするもので、韓米同盟を揺るがしかねない。

朝鮮戦争勃発から68年、休戦協定から65年、南北の朝鮮民族にとって長きにわたるこの戦争を続ける理由も、名分も、利もない。それは米国とて同様ではないのか。 戦争と対立から利益を貪る狂気じみた強硬派を除いては・・・。

朝鮮戦争の終結と平和体制の構築は避けられない。(M.K)

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。