「何でもあり」は許されない

コリョ・ジャーナル

31日、ある意味で「衝撃的な報道」が流れた。

ベトナムのハノイで行われた朝米首脳会談と関連して朝鮮側の実務交渉代表を務めた金赫哲 米国担当特別代表が、「決裂」の責任を問われて朝鮮外務省幹部4人と共に3月に処刑されたと言う。 また、金正恩国務委員長の特使として米国を訪問、トランプ大統領とも会談した金英哲 朝鮮労働党副委員長は失脚して朝中国境付近での強制労働に送られたという。

日本や欧米メディアはここぞとばかりに挙って取り上げ「北朝鮮の暴虐性」を報じた。 そう、ここまではお決まりの「北朝鮮バッシング」の一環といえる。

だがこの報道、あまりにもお粗末だ。

この「驚くべき情報」の出所を辿っていくと、韓国の有力紙である「朝鮮日報」がその発信源となっている。

「朝鮮日報」を日本の新聞社に例えるならば、「読売新聞」の発行規模に「産経新聞」の報道姿勢を併せ持つ、極めて「右」に偏ったスタンスを持つ新聞社だ。

過去にも朝鮮問題と関連して数多くの「デマ」と「謀略記事」を発信してきた「華々しい経歴」がある。

そんな「朝鮮日報」がそもそも今回の「報道」に関して、自社発記事の中で事実確認が出来ていない事を認めている。 「フェイクニュース」だと自らが認めているのだ。

しかし、これを引用したメディアはなんの躊躇もなく垂れ流している。 さもそれが「事実」であるかのように。

この手のニュースは、幾人もの要人を「処刑」しては「生き返らせ」てきた前科がある。

直近でわかりやすい著名人士の名を挙げてみよう。

4月の朝鮮の最高人民会議で、引退した金永南委員長の後任として新たに就任した崔龍海委員長。 粛正されたと報じられていたが、今では朝鮮外交の新しい顔だ。

モランボン楽団の玄松月団長。2013年に「スキャンダル」で処刑されたと報じられたが、2018年2月の平昌冬季五輪開催時に朝鮮の芸術代表団「三池淵管弦楽団」の団長として韓国を訪問し舞台で歌声も披露、それ以降はご存じのとおりだ。

今回の報道で強制労働に送られたとされる金英哲副委員長に至っては、4月に朝鮮を訪問した在日コリアンが平壌市内で出会っている。 一事が万事この調子だ。 いかにデタラメがまかり通っているか計り知れる。

朝鮮の要人たちが繰り返し「死んでは生き返る」デマ報道を受けて、「朝鮮は死者さえも自在に生き返らせる神の奇跡の国」かとの皮肉さえ聞こえる始末だ。

問題は、このような「大誤報」や「トンデモなデマ」を報じても、メディアが訂正、謝罪するどころか「北朝鮮ならあり得る」という理屈にもならない屁理屈で開き直る姿勢だろう。 ジャーナリズムを標榜するメディアとしては自殺行為に他ならない。

韓国政府も「尚早な判断や言及は適切ではない」として、「朝鮮日報」の報道を迂回的に否定している。 韓国メディアも「朝鮮日報」系以外は比較的冷静に対処している印象だ。 南北和解協力を推し進める将来を見据えているからだ。

「デマ記事」や似非「専門家」の与太話を無批判に平気で垂れ流す「北朝鮮問題、何でもあり」が許される時代は終わった。 日本のメディアもそろそろ報道姿勢を改めたほうが良い。 日朝国交正常化後を真剣に考えるのであれば。(Ψ)

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。