M.K通信 (54)右往左往する超大国

「新しい計算法」を示せと要求した期限(今年末)が迫り、朝鮮側は米国に対朝鮮敵視政策を撤回することを強く求めている。 これに対して米国は敵視政策を撤回する決断を下せず右往左往して超大国の醜態をさらしている。

米国が韓米合同の空軍演習強行を発表した11月4日から「軍事演習延期」に追い込まれた17日までのわずか2週間の間に行われた朝米間の緊迫した攻防は、朝米交渉において圧力で一方的非核化を迫る戦略が破綻していることを白日の下に曝け出した。

ストックホルム実務交渉決裂の1か月後に米国が挑発的な韓米合同軍事演習「ビジラントエース」を演習名を変えて強行することを発表したのは、「新しい計算法」を示すことを求めた朝鮮側の要求を無視して圧力で屈服を迫ろうとする露骨な意思の表れであった。 米国の軍事的圧力に対する反撃は、朝鮮外務省のクォン・ジョングン巡回大使の談話発表(6日)で始まった。 同巡回大使は「我々に対する敵対宣言」と非難、「米国の無謀な軍事的動きを座視しない」と指摘、強い不快感を露わにした。 これに対し米国国防省は 「北朝鮮の姿勢によって軍事訓練を調整しない」のと強気のコメントを発表したのは周知の事実。

しかしこの強硬姿勢は、13日の朝鮮国務委員会スポークスマン談話によって一変する。 金正恩委員長が直接管轄する国家指導機関である国務委員会が朝米関係問題で談話を発表するのは初めてで、金正恩委員長の意向を米国に直接伝えることを意図したものとみられる。

「自主権と安全の環境を脅かす物理的動きが目前にはっきりと表れた以上、それを強力に制圧するための応戦態勢を取る」「現在のような情勢の流れを変えないなら米国は遠からずさらなる脅威に直面」するとした国務委員会談話が発表されると、エスパー米国防長官はその数時間後に韓国に向かう専用機の中で「訓練を調整」すると軟化せざるを得なかった。 この「調整」発言を受けて翌日の14日に談話を発表した朝鮮アジア太平洋平和委員会の金英哲委員長は「米国が南朝鮮との合同軍事演習を抜けるか、または練習自体を完全に中断するという趣旨と理解したい」「敵対的挑発がついに強行されるなら、我々はやむを得ず、米国が受け止め難い衝撃的な膺懲で答」えると指摘した。

米国がこれに反応したのは3日後の17日。 軍事演習の「延期」を発表するに至るが、外交的機会を生かすための「善意の措置」だと強弁した。 しかし問題を朝米の外交で解決するつもりなら、はじめから軍事演習を強行する必要はなかったはずだ。 朝鮮側の強い反発で、自らが公言した軍事演習の「延期」を発表せざるを得なかったことは苦渋の選択であったと思われる。 合同軍事演習をめぐる攻防は米国の惨敗で終わったと言えそうだ。 これで朝米実務交渉は再開に向かうと思うのは自然の流れであったと言ってよい。 しかし朝鮮側は大方の予想に反して、演習「延期」発表後間髪を入れずに対朝鮮敵視政策の撤回を強力に求め世論を驚かせるに至る。

軍事演習実施決定から「延期」発表までを第1幕とするなら、第2幕は「延期」発表の数時間後に発表された朝鮮外務省スポークスマン談話で始まった。

談話は国連総会で採択された反朝鮮「人権決議」を批判して、米国が「我々を孤立、圧殺するための敵視政策に相変わらず執着していることを実証」している指摘、「このような相手とこれ以上話し合う意欲がない」と、米国の敵視政策撤回が交渉再開の前提であるとの姿勢を鮮明に打ち出したのだ。

これは、敵視政策が撤回されなければシンガポール共同声明で約束された新しい朝米関係の樹立、恒久的な平和体制の構築、朝鮮半島の非核化を実現することはできず、「新しい計算法」を示すことはできないとの判断に基づいたものであろう。

朝鮮外務省の金桂官顧問が18日、トランプ大統領がTwitterで金正恩国務委員長に向けて「直ぐ会おう!」と呼掛けた(17日、現地時間)ことに反応し発表した談話で、「対話の糸を放したくないなら、我々を敵と見なす敵視政策をまず撤回する決断を下さなければならない」と決断を迫ったのは、敵視政策撤回要求が朝鮮側の断固とした意志であることを示すに十分であった。 金桂官顧問に続き、朝鮮アジア太平洋平和委員会の金英哲委員長も同日に談話を発表、合同軍事演習は「延期」ではなく「完全な中止」を求めたもの、「米国は、対朝鮮敵視政策を撤回する前には非核化協商について夢も見てはならない」とダメを押した。

朝米間の緊迫した攻防で見落としてはならないことは実務交渉の金明吉首席代表が14日の談話で、「情勢変化に従って瞬間に反故になりうる終戦宣言や連絡事務所開設のような副次的な問題」と指摘したことだ。朝米敵対関係の根源である戦争を終わせ平和協定が締結されなければ、終戦宣言や連絡事務所開設はいつでも反故にされうる、絵にかいた餅に過ぎないことは明らかだ。 金首席代表の指摘は朝鮮側が求める「新しい計算法」の中身を示唆したものとして注目される。

合同軍事演習実施発表に端を発した一連の攻防を通じて浮かび上がったのは、「生存権と発展権を阻害する対朝鮮敵視政策の撤回」に集約される朝鮮側の要求に、決断を迫られ苦悩する米国の姿だ。

米国に選択肢があるとは思えない。 米国の声(VOA)は、米国務省の報道官室の関係者が19日(現地時間)、北朝鮮の要求に対する論評要請に「トランプ大統領は米朝関係の転換、恒久的平和構築、完全な非核化などシンガポールの約束を進展させることに引き続き専念している」と明らかにしたと報じている。

シンガポール共同声明の約束を進展させるとのコメントが真意なら、朝鮮戦争に終止符を打ち、朝米の敵対関係を終わらせることに躊躇する理由はない。 砲火を交えた朝米が新しい関係を作ろうとするならまず戦争を終わらせなければならない。 また恒久的な平和体制の構築は休戦協定を平和条約に変えなければ不可能なのはあまりにも明らかだ。 さらに冷戦を維持したまま非核化を語るのは現実離れした笑い話だ。 特に一方にだけ非核化を求めるのは、戦争中の相手に武装解除を要求する行為で、実現を望めない愚かな主張だ。

米国が朝鮮の要求に答えて敵視政策を撤回する決断を下す時ではないのか。 朝米関係の改善に反対する米日韓の強硬派の主張は、何の解決策も示すことなくただ危機を煽るだけの無責任でやみくもな対決論に過ぎない。

去る15日に韓国の492の社会、労働、宗教団体が連名で「対北政策全面転換要求各界時局宣言」を発表した。 宣言は、朝米首脳会談、南北首脳会談によって作られた平和への流れが深刻に脅かされていると指摘、その原因は、新しい関係樹立を約束した朝米シンガポール宣言にもかかわらず対北敵対政策を持続している米国に根本責任があるとしながら、文在寅政権の対米依存政策にも責任があると断じた。 日本では報じられていないが、GSOMIAと駐韓米軍維持費をめぐり反米感情が広がる中で発表された時局宣言は、対決ではなく平和と共同繁栄に向く韓国国民世論の動向を示して余りある。(M.K

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。