M.K通信 (98) 砂の中に頭をうずめるダチョウ

 オストリッチコンプレックス(ostrich complex

「砂の中に頭をうずめるダチョウのようなジョー・バイデン行政府の対北政策は禍で終わることになりそうだ」

国務省情報調査局東北アジア室長を務めたジョン・メリル氏が1月21日、韓国の反共保守新聞「東亜日報」とのインタビューに応じ上記のように発言した。(「東亜日報」1月23日付)

「砂の中に頭をうずめるダチョウ」とはあまり聞きなれないが、米国にはオストリッチコンプレックス(ostrich complex)という言葉がある。 目の前にある問題や危険を直視せず、何もしないでやりすごそうとする心の状態を指す言葉で、米国の心理学者による用語だと言う。 日本語ではダチョウ症候群と言われ、体の大きなダチョウが、身に危険を感じた際に砂の中に頭だけをうずめ、安全な場所に隠れたつもりになっている様子にたとえたものーと解説されている。

ダチョウが身の危険を感じた際、本当に頭だけを砂にうずめるのかは定かでない。 ただ英語のostrichにはダチョウの他に「現実逃避者、事なかれ主義の人」という意味があるという。

米国の朝鮮問題専門家であるジョン・メリル氏が、戦争抑止力を高度化する朝鮮に対して何の策もなく手をこまねいて見ているだけのバイデン政権の無為無策を、「砂の中に頭をうずめるダチョウ」、オストリッチコンプレックス(ostrich complex)と辛辣に非難したわけだ。

米国が対朝鮮敵視政策を撤回することを要求、「実用的で調整されたアプローチ」を敵視政策の延長と一蹴、戦争抑止力を高度化する朝鮮に対して、米国はなす術を失っているのが現状だ。 ジョン・メリル氏もバイデン政権の無為無策を非難するだけで、何か有効なアイディアを進言しているわけでもない。

 「束手無策」

朝鮮語に「ソクスムチェク」という言葉がある。漢字では「束手無策」と書き、その意は「なすすべがない事」。 日本語に訳せと言われれば、「無為無策」とすることもできる。

3年前の2019年12月31日、金正恩総書記は朝鮮労働党第7期第5回総会で次のように指摘した。

「今後、米国が時間稼ぎをすればするほど、朝米関係の決算を躊躇すればするほど予測しがたく強大になる朝鮮民主主義人民共和国の威力の前に束手無策(無為無策)でやられるしかなく、より一層行き詰まった境遇に陥ることになる」

米国がハノイ首脳会談で、朝米共同声明を踏みにじり体制崩壊への企図を露骨に示したばかりか、計算法を変えることについての朝鮮の要求に応えなかったことは周知の事実。

金正恩総書記はこの総会で、「世紀をまたいで続いてきた朝米対決は今日になって、自力更生と制裁との対決に圧縮され明白な対決の図を描いている」との認識を示し、「敵対勢力の制裁圧力を無力化させ、社会主義建設の新しい活路を開くための正面突破戦を強行」する方針を示した。 さらにこの正面突破戦は政治外交的に、軍事的に担保される必要があるとして、誰も脅かすことができない軍事力を保有し強化していくことが国防建設の目標であることを明確にした。

この党総会を報じた「労働新聞」(2020.1.1)は、金正恩委員長(当時)は「アメリカの本心が明らかになった今日になっても、アメリカの制裁解除に対する期待のようなものを持って躊躇する必要は一つもなく、アメリカが対朝鮮敵視政策を最後まで追求するなら朝鮮半島の非核化は永遠にないということ、アメリカの対朝鮮敵視政策が撤回され朝鮮半島に恒久的で強固な平和体制が構築するまで、国家安全のために必須で先決的な戦略兵器開発を引き続き力強く行っていくことを断固宣言なされた」と強調した。

 敵対視政策撤回が焦眉の課題

この朝鮮労働党総会から2年。 事は金正恩総書記の言葉通りに進んでいる。

このわずか2年の間に、米国の対朝鮮敵視政策の撤回が朝米対決の焦眉の課題に浮上した。 バイデン政権の「実用的で調整されたアプローチ」は朝鮮側の敵視政策撤回要求に一蹴され実現の可能性は皆無で、米国の伝家の宝刀たるはずの制裁はもはや対朝鮮交渉のカードとしての機能を失っている。 朝鮮が二年前に打ち出した「正面突破戦」は「制裁封鎖策動の総破綻」を目指したもので、米国の敵視政策は自力富強、自力繁栄のテコになっており、戦争抑止力の高度化を招いているのが現実だ。

極超音速ミサイルに巡航ミサイルの試射、戦術誘導弾、中長距離弾道ミサイル「火星12」の検収試射等々について米国は新たな安保理制裁もままならず、激しく非難しながらも「前提条件なき直接協議」をオウムのようにくり返すだけでなす術を失っている。

まさに「束手無策」の状態で、「砂の中に頭をうずめるダチョウ」とのジョン・メリル氏の指摘はなす術を失ったバイデン政権の苦境をよく表している。

 戦争勢力は朝鮮ではなく米国

バイデン米政権は朝鮮の一連のミサイル試射は朝鮮半島情勢を「ますます不安定化させている」と非難している。 盗人猛々しい米国のプロパガンダだ。

朝鮮半島情勢を緊張させ不安定にしているのは朝鮮ではなく米国であろう。

朝鮮半島における戦争勢力は朝鮮ではなく米国であることをはっきりと確認しておく必要がある。 それは米国が朝鮮戦争を終えるための平和協定を一貫して拒否していることを見れば一目瞭然である。 休戦は法的に戦争状態の継続を意味し、いつ熱戦になってもおかしくない。

熱戦への危険を封じて強固な平和体制を構築するには、休戦状態を平和体制に変えなければならない。 平和協定が結ばれれば「UN軍」の解体は必至で、米国は二度と「UN軍」の名を盗用して朝鮮で戦争を起こすことは不可能になる。UN憲章が「武力による威嚇又は武力の行使」を禁止しているためだ。 このUN憲章の鎖に縛られず隙を見て兵を北に進めるには、休戦が最も都合の良い状態なのだ。 米国が平和を拒否し朝鮮戦争を続ける理由は、朝鮮半島北部地域にある合法政権である朝鮮民主主義人民共和国を打倒して、朝鮮半島を大陸侵略の兵站基地化するところにあることは明らかだ。

米国が平和を拒否して戦争を続ける理由がここにあることは小学生にも理解できることだ。 米国が主張する「北の脅威」が平和協定を拒否する理由にはなり得ない、もし本当に「脅威」があるなら平和協定を締結して、「脅威」の当時者を国連の鎖で縛っておけばよいことだ。 朝鮮半島不安定の要因が朝鮮にあるとの米国と追従する韓日の詭弁は国際社会に通じない。 それは自国民を騙し世論を管理するだけの方便に過ぎない。

 核抑止力高度化を淡々と進める朝鮮

極超音速ミサイル試射などの朝鮮の行動は米国の脅威に対処するための国防計画に沿った通常の活動である。

米日韓では様々な解釈が横行しており、中にはブリンケン国務長官が吹聴している「米国の気を引くため」との解釈もある。 朝鮮が対話を提案して米国が拒否しているのならそのような解釈が可能だが、今は米国が朝鮮に対話を懇願しており、米国が朝鮮の「気を引こうとしている」のが現状だ。 ブリンケンの解釈は支離滅裂で、砂に頭を埋めたダチョウそのものだ。

戦争勢力である米国の敵対視政策が続く限り、朝鮮は戦争抑止力高度化を淡々と進めるであろう。

朝鮮が核抑止力を高度化するのは米国の核の脅威に対処したもので、どのような脅威も制圧できる国防建設は計画的に進められており、米日韓の政治的行事などに対応したものではない。

米国が戦々恐々とするICBM実験は朝鮮の国防建設計画に従って行われることになる。 驚くべきことではない。 米国もやっていることで、朝鮮は行ってはならない理由はない。(M.K)

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。