M.K通信 (73)連絡事務所爆破で余地なく暴かれた文在寅政権の狡猾で陰険な敵対行為

朝鮮(北側)が韓国(南側)の敵対行為を厳しく追及する過程で北南共同連絡事務所が爆破されるなど、北南間で緊張が高まっている。

金正恩委員長の指導下で開かれた(23日)朝鮮労働党軍事委員会第7期第5回会議予備会議で、朝鮮人民軍総参謀部が提起した対南軍事行動計画を保留する決定を下したことで、緊張は小康状態にはいったが予断を許さない。

文在寅政権の対応次第だが、爆破に至る過程で、首脳会談での合意文書である板門店宣言や軍事合意を踏みにじってきた文在寅政権の狡猾で陰険な敵対行為が弁明の余地もなく赤裸々に暴かれた。 文在寅政権は南北融和に積極的だとする、一般に定着していたイメージとはかけ離れた現実には脅かされる。

主脳合意を踏みにじる敵対行為

北南共同連絡事務所の爆破にまで至った「脱北者」のビラ散布に端を発したものであることは周知の事実。

ビラ散布と敵対行為の中止は板門店宣言の条文に記されている。

にもかかわらず、ビラ散布は2年にわたり放置されてきた。

文在寅政権下でのビラ散布回数は全30回に上り、板門店宣言でその中止が約束された後にも15回にのぼるという。 30回の内、文在寅政権が防いだのはただの一回。

文在寅政権はビラ散布を止めない口実を、「表現の自由」に求め「止められない」と主張してきた。 日本のマスコミも同調して朝鮮側の要求が民主主義に反するかのような論調を展開しているが、詭弁に過ぎない。

韓国には思想の自由を規制する、日本の戦前の治安維持法に匹敵する国家保安法がある。 韓国の識者は思想の自由を抑圧して置いて、「表現の自由」を主張するのはナンセンスであるとと厳しく非難している。 治安維持法が反民主的悪法であることは日本でもコンセンサスであろう。 非民主的な国家保安法の存在を伏せたまま「表現の自由」を云々することは、卑劣な詭弁以外の何物でもない。

親米保守政権であった李明博、朴槿恵政権は、対朝鮮敵対政策を隠すことなく露骨に追及したが、「脱北者」の稚拙なビラ散布を厳しく統制し、19回にわたって阻止した。 文在寅政権が主張する「表現の自由は口実に過ぎず、ビラ散布を意図的に野放しにして助長してきたことは明らかだ。 弁明の余地はない。

平和と共同繁栄の美辞麗句の影で文在寅大統領自身が、首脳会談での合意を破り、敵対行動を意図的に、狡猾かつ陰険に追及してきたことは覆いようがない。

「脱北者」のビラは、朝鮮の最高尊厳を激しく攻撃している。 これを見て見ぬふりをして助長したことに、文大統領が内に秘めて追及した敵対意志が込められているようだ。

この敵対意志が露骨に表面化したのが、軍備増強と軍事演習だ。

文在寅政権の国防費は朴槿恵前政権をはるかに上回り史上最高を記録している。 文在寅大統領の音頭で大幅増額して、F-35戦闘機やグローバルホークなどの米国製先端兵器導入に躍起になっている。

米国製先端兵器の導入は朝鮮半島での有事に対処するためで、北側指導者の「斬首作戦」を念頭に置いたものであることは秘密ではない。 昨年夏に行われた米韓合同軍事演習で、米軍の支援下で「斬首作戦」を行い「敵占領地」の「統治訓練」を行っている。

文在寅大統領は、軍事的に敵対姿勢を露骨に示す一方で、顔色一つ変えず、平和と共同繁栄を唱え南北協力を繰り返してきた。 実に狡猾で陰険と言わざるを得ない。

米国にひれ伏す文在寅大統領

朝鮮側が指摘しているように、文在寅大統領は同族との和解、協力よりも、米国との「同盟」を優先して、「同盟」による問題解決を一貫させた、徹底した親米事大主義者だ。

重ねて指摘されていることだが、トランプ大統領の「承認」発言に基づき、2018年11月に「韓米ワーキンググループ」が発足すると、すべてをこの「ワーキンググループ」に報告し指示を仰ぐ体制を確立した。 「ワーキンググループ」の米側責任者はビーガン国務副長官だが、韓国の大統領が米国の国務副長官にひれ伏している格好だ。

「国際社会と歩調を合わせて」「制裁の枠内で」が文大統領の口癖になっている。 国際社会とは米国のこと。 首脳会談で合意した金剛山観光と開城工団の再開も、米国がノーと言っているのでできない、条件造成に努める、国際社会の理解を得るべく努力すると繰り返すだけで応じる気配すら見せていない。

文在寅大統領自身が今年初めに打ち出した、コロナ協力、人道支援、山林協力などに至っては、トランプ政権の指示にしたがって打ち出した協力案だ。 米国が敵対政策を撤回しない限り朝米対話に応じないと宣言している、朝鮮に対する関与の道を開くために考え出したもの。

トランプ大統領自身今年になって2度も親書を送ったが、3月の親書でコロナ協力を申し出たことが確認されている。 米韓の提案が歩調を合わせて行われたことを確認できる。

ここに「金正恩氏が採るべきだった『プランB』、韓国市民を敵に回すな」(徐台教 | ソウル在住ジャーナリスト。「ニュースタンス」編集長、ヤフーニュース 6/17)という記事がある。 筆者はもともと在日だが現在はソウルを舞台に活動しており、文在寅政権を代弁しているとみられるジャーナリストだ。 ここでいう「プランB」とは、朝鮮側の政策ではなく、筆者が勝手に考えた朝鮮側が取るべき政策選択だ。 筆者曰く、韓国側は、「大規模食糧支援、医療支援、植樹事業などで国連の制裁免除をすでに取り付け、北朝鮮に実施を打診していた」のになぜ受け入れないのか、ということ。 なんてことはない。 ただ韓国側の提案を受け入れろと主張しているに過ぎない。 これが朝鮮側が取るべきだった「プランB」というから笑止千万であるが、文在寅政権の考え方を反映している。

この筆者だけではなく、韓国の保守系紙も提案を受け入れない朝鮮の姿勢が理解できないと指摘し、いぶかっている。

というのも上記提案の前提が間違えていることに気づいていないためだ。 文在寅政権の提案は経済的困窮とコロナ蔓延を前提にしたもので、受け入れざるを得ないとの「確信」のもとに打ち出された。 しかし、米国の制裁にも関わらず朝鮮の経済は順調でコロナ感染者も出ていない。 朝鮮の内情に対する分析が根本的に間違えていることに気づかずに提案を繰り返しており、文在寅政権の愚かさの表れだ。

民族の力を信じずに、米国を崇拝し米国に頼ってすべてを解決しようとする事大主義者に愚かさはつきものなのか。 自分で考える能力を失ってしまっているからだろう。

誰も望まない軍事的緊張

文在寅政権の敵対行為と対米事大主義が招いた北南関係の悪化は、朝鮮労働党軍事委員会の保留措置によって、全面破綻の一歩手前で小康状態に入った。

朝鮮人民軍が協力事業のために撤去した、金剛山観光、開城工団地区に軍事基地を再構築すれば、協力事業再開の道は閉ざされるばかりか、その土台である6.15共同宣言も大きく棄損されることになる。 緊張の激化は避けられず軍事衝突にも発展しかけない危険な状況が作られる恐れがあった。

朝鮮労働党軍事委員会の保留決定に保守勢力まで含めて安堵したのは、ややもすれば軍事衝突に発展しかねない緊張を誰も望んでいないことを示している。

韓国・国防部は「軍事的緊張緩和に役に立つ」とコメントし、一貫して南北対立を煽ってきた保守系紙「中央日報」(6.24)までもが「緊張が再び高まるのは決して望ましくない」とビラ散布を強行しようとする「脱北者団体」を非難した。 普通なら絶対ありえないことだ。

ありえないことと言えば、菅義偉官房長官は24日午前の記者会見で、「南北関係がこれ以上緊張しないことを望んでいる」とコメントしたことや、いつもなら朝鮮を非難する米国が沈黙を守っていることもあまり見られない景色だ。 朝鮮外務省のクォン・ジョングン米国担当局長が11日、米国務省が「失望」云々したことについて、「我々と米国の間には別に計算することも少なくないが、わけもなく南朝鮮の目上の者のように振る舞って他人が受ける禍まで自ら被る必要があるのか」と指摘して以来、口を閉ざしている。

ボールは文在寅政権に渡された。

朝鮮の金英哲党副委員長は24日夜に談話を発表して、軍事行動計画の「完全撤回」を云々した鄭景斗韓国国防相発言を非難した。 「度を越す失言」で「保留」が「再考」されないように注意すべきだと警告し、怯えた犬ほどよく吠える、虚勢で軽薄、蒙昧な発言に遺憾であると指摘した。(M.K

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。