「平常の夏」に「平和な日常」を思う

コリョ・ジャーナル

連日茹でられているかのようだった恐ろしい酷暑の日々が一段落し、やっと「平常の夏らしさ」(?)が戻ったようなので、陽が真上に登りきる前に事を終えようと墓の草むしりに出向いた。

乾いた空気がまるで秋のような心地よい風が吹き抜ける中だったので件の除草作業もはかどり、帰り道にモーニングがてら「厄落とし」も兼ねて最寄りの喫茶店に立ち寄った。

アイスコーヒーを飲みながら、SNSとメールの確認の為にスマートフォン画面とにらめっこしていると、横の方から何やらブツブツと呟きが聞こえてきた。

声の方に目をやると、年の頃は齢70過ぎくらいだろうか、一人の老年女性が新聞を読んでいたのだが、何だかとてもご立腹の様子だったので気になって、当人に気取られぬようにそっと耳を傾けてみた。

「…なんだこりゃ?安倍!ええ加減にしろ!被災地を放っといてゴルフ三昧だあ?ふざけんな!お前、股が痛いんじゃなかったんか?でら腹立つわあ!こんなクソタワケ担いどる自民党みちゃあ、つっと潰れりゃええんだわ!…」

とまあ、こんな言葉がポンポン飛び出してくる。 思わず一瞬我が耳を疑ったが、間違いなく老女性の口から発せられている言葉だった。

老女性に少し驚きつつ(感嘆しつつ?)も内心その言葉に共感しながら、彼女が座る席の先のテーブルにふと目をやると、お盆休み中のサラリーマンと思しき壮年男性が一名。

何気なくその男性の手元を見ると、「実話」系か「大衆」系かの週刊誌が。これだけなら休日の喫茶店にありがちな絵図なのだが、間が悪いことにヌードグラビアページが全開。 この男性、グラビアだけ見終えると、記事の方には目もくれず新しい週刊誌を持ってきてはまたグラビアのみを見ている様子。 この、なんとも対照的というか、ある意味シュールともいえる奇妙なコントラストに、複雑な心境にならずにはいられなかった。

かたや、一線を退かれた年齢の人物が日本の在りようを憂い怒りを噴出させている一方で、かたや、社会的に現役バリバリの年齢層と思しき人物が、ーたまたまその時だけそうだったのかもしれないがー 朝からスポーツ、スクリーン、SEXである。

「平和な日常」だと言ってしまえば、それはそうなのかもしれない。 でも、何かが違う、何かがずれているような気がする。

これだけ政治権力がらみの不正や腐敗、犯罪疑惑が明らかになっているにも関わらず、大多数の市民らの「心の声」が表立って見受けられない。 むろん、一部の人々は怒りの声を上げたりしている。 しかし、国の政治の在り方、社会の在りようについて「他人事」と捉える、あるいは、関りを避けようとする無関心な人々があまりにも多過ぎやしないだろうか。

TVのスイッチを入れれば、首相が夏休みでゴルフ三昧だとトップニュースから始まり、やれ安倍首相自民党総裁選3選足場固めだの、やれ芸能ニュースだの、やれ大阪で容疑者逃走だの、やれ高校野球だの、やれアマチュアボクシング問題だのと延々とやっている。

今も被災者が苦しんでいる西日本豪雨災害の復興問題はどうなったのか? 首相の暴力団との黒い交際問題はどうなっている? 森友学園問題は? 加計学園問題は?

権力に迎合し、どうでもいいような題材を「話題」と称して連日延々と垂れ流し続けるTVメディアや、権力に忖度し、その不正腐敗を暴くことを躊躇する言論にも問題はある。 だがそれよりも、事実を知ってもなお「他人事」と捉えて声を上げない大多数の「市井の人々」の感覚が、日本社会を覆うこのなんとも言えない「空気感」を作り出していると思うと少し暗い気持ちになる。

「他人事」、「政治は他人任せ」、「自分ごときがムキになってもどうせ変わらないという諦め」、そろそろ止めにしませんか?(Ψ)

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コリョ・ジャーナル

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ABOUTこの記事をかいた人

元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。