サマーフェスタと「明るい未来」

コリョ・ジャーナル

縁あって先日、とある朝鮮学校が催したサマーフェスタに参加する機会があった。

なりを潜めていた猛暑がここ2,3日でぶり返し、夕方になってもなかなか気温が下がらない中、電車に揺られて最寄り駅で下車、強い西日を浴びながら会場となる学校のグラウンドに向かった。

会場時間よりも45分ほど遅れて到着してみると、そこは既にほぼ満席状態になっていた。

実を言うと、筆者もその学校のOBだ。 周りを見渡せば、懐かしい顔、見覚えのある顔、知らない顔、若い世代が集まっていて、用意された屋台料理やビール、チューハイ、マッコリ等の飲食物を前にワイワイガヤガヤやりながらとても賑わっている。

暫くすると開会挨拶があり、舞台公演が始まった。 青年らの合唱や、歌舞団による朝鮮民謡、朝鮮舞踊等が舞台上で繰り広げられた。

舞台を見ていて少々驚かされた。 なんと、場の雰囲気とは似合わぬ、聞き覚えのあるロックンロールナンバーが聞こえて来るではないか。 「うん?!」初めは思わず耳を疑ったが、どこぞの「イカした兄ちゃん」が「キャロル」のナンバーをステージで歌いだしたのだ。

すると、舞台の下では老いも若きもゴーゴーやモンキーダンスを踊り出し、中には浴衣で踊り出す女性の姿も。 一瞬、ここは本当に在日コリアンの納涼会かと疑ってしまうような光景が広がった。 踊る人をよく見ると、在日コリアンの中に明らかに感じが違う人々が混ざっている。 疑問に思い、旧知の主催者関係者に話を聞いてみた。

曰く、当日サマーフェスタに集まった参加者のうちの約半数が、学校近隣の住民の方や、在日コリアンが経営する飲食店の常連さんとその連れ、学校関係者の友人だという話。 なるほど、そういうことだったのかと妙に納得がいった。 日本の人が気軽に参加してくれて、とても有り難いことだと思った。

とある大学の先生に誘われて参加したゼミの生徒(日本人女子)は、「初めて参加してみてビックリした。 とても楽しい。 機会があればまたこんなイベントに参加してみたい」と率直に語ってくれた。 学校を中心とするこの地域の在日コリアンコミュニティが、世代が変ってもしっかりと受け継がれ、周囲の日本住民の理解も得ながら良好な関係性を築いている事が嬉しく、誇らしく思えた。

しかし、そうはいっても昨今の日本の現状を考えると喜んでばかりはいられない。 地方の小さな地域レベルでは日朝間の友好と親善は脈々と受け継がれているが、もっと大きなレベルになってくると事情が違ってくるからだ。

安倍政権発足以降、加速度的に悪化・深刻化した人種・民族差別や社会的マイノリティに対する悪質なヘイト行動。 在日朝鮮人に向けられる民族差別もまた然りで、朝鮮学校への助成金の凍結や削減、朝鮮高校の無償化除外等の差別的措置が、「国の方針」として堂々と行われる現状だ。

日本国内閣総理大臣が自ら率先して「北朝鮮の脅威」を声高に煽り続ける以上、その意を勘ぐった(忖度した)TVや新聞が敵対心を煽り、流されやすい「市井の人々」はそれに感化され、「朝鮮憎し」の負の感情は世論として依然高まったまま。

「近しい隣人」同士、仲良く出来るはず。 「ご近所さん」にはそれが当たり前に出来るのに、国レベルだとそれが途端に難しくなる。

たしかに日朝両国間には越えねばならないハードルがある。 しかしそれは、平和な明るい未来に向かう過程の小さな障害物に過ぎない。 先ずは国交を正常化し、両国間に横たわる諸問題を膝をつき合わせて一つ一つ解いていけば良い。 その過程で、謝るべきはしっかり謝り、償うべきはしっかり償って信頼と友情を育んでいけば良い。 そして明るい未来を子供たちに繋いでいければ良い。 そう思えた時間だった。

余談だが、舞台上でキャロルのナンバーを歌ってくれた「イカした兄ちゃん」、故ジョニー大倉氏の息子さんだと言うことを、一言付け加えておく。(Ψ)

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。