オレは「ノーベル」を獲る!

コラム「核戦争は軟弱さが引き起こす」

4日テキサス州ダラスで開催された全米ライフル協会(NRA)総会で、トランプ大統領はこう発言した。 彼はオバマ政権の対朝鮮政策である「戦略的忍耐」が、全ての対話を拒否するものだと非難した。

トランプ大統領は、自身の就任以降朝鮮との間で厳しい言葉の応酬が行き交ったが、結局は首脳会談につながったと自讃、冒頭の言葉を述べつつ、アメリカは決して軟弱ではなく核戦争は起きないと延べた。

その過激で予測不能な言動が何かと注目されがちなトランプ大統領だが、全ては自身の利害と名誉の為の計算されたものと思われる。

そもそもトランプ氏は有数の富豪であり有能な事業家でもある。

トランプ氏は元来、アメリカの主流政治家ではなく不動産業者出身であり、安定的により多く儲ける為、名声を得る為に政界に飛び込んだ後発の政治家だ。 それが世界の予想を覆し、大統領選挙で既存主流政治家であるヒラリー・クリントンを破って大統領に当選したわけだ。

トランプ氏は大統領当選者になった時から、米政界主流支配勢力からの激しい誹謗中傷と様々な妨害攻撃を受けてきた。 ブッシュ、クリントン、ブッシュJr.、オバマ、ヒラリーに連なる主流支配勢力=軍産複合体の回し者は、トランプ氏の失脚を狙って様々な疑惑情報を流し政治工作を仕掛けている。

トランプ氏は非主流の新興支配勢力だ。 ゆえに、長きにわたって米政界を支配してきた従来勢力とは利害が反する関係といえる。 従来勢力が議会、行政機関を押さえている状態では彼らは敵であり、協力するのは土台無理な話だ。

アメリカ外交協会の資料によると、トランプ大統領就任後、1年の間に高位職の外交官の60%が辞任したという。 これは「ワンマン」「トップダウン」等のトランプ大統領の性質によるものではない。 それらの殆どがオバマ政権時に任命された人物であり、トランプ氏は自分の方針、意図に忠誠を示す者を探すのがなかなか難しい状況だったと見える。 これが外交、安全保障の実務担当官僚がなかなか定まらなかった要因であり、トランプ氏は敢えてこれを放置していたフシも見受けられる。

当面の政権安定を図るため、トランプ氏は旧支配勢力側の人物であるティラーソン国務長官とマクマスター安全保障担当補佐官を起用したりもした。 しかし、自身と同じ非主流派であり、自身の示す朝米首脳会談方針を擁護し、忠誠を示すポンペオ国務長官とボルトン安保担当補佐官に置き換える事によって自身の色を鮮明化した。

トランプ大統領は来る朝米首脳会談を利用、軍産複合体を制圧して政権の強化を図ろうとしている。 会談が成功すれば11月の中間選挙で勝利して政権強化できるし、2020年の大統領選挙でも勝利できる。 何よりも、自身の悲願でもある「ノーベル平和賞」と言う名誉に手が届く可能性がより現実的に、より近くなる。

目立ちたがりやのトランプ大統領が、朝米首脳会談が水面下で既に日時、場所を決めているにもかかわらず未だに小出しでしか情報を出さないのは、軍産複合体の妨害を念頭に置いているからだ。 板門店が急浮上しているのは世論の反応を測るアドバルーンと思われる。 恐らく本命は平壌で、トランプ氏自身「世界が驚くだろう」とそれを匂わせている。

就任1年を通してトランプ大統領は、今のアメリカには朝鮮と核戦争をするだけの能力がないこと、朝鮮が決して屈服しない事を悟った。 ただ、旧勢力が朝鮮危機を絶えず煽り、自身の既得権を維持しようと画策している現実を知ったはずだ。

得にならないことはしない、自分の利益に叶うことなら即決で動く、そんなトランプ大統領からすれば、何の得にもならず負担ばかりが大きい対朝鮮強硬策を捨て、朝米首脳会談を成功させることこそが、軍産複合体の影響力をそぎ落とし自身が生き残る道でもある。

朝米首脳会談を利用し、従来の対朝鮮敵対政策からの大転換と関係正常化を通じて自身の政権強化をはかり、かつ、ノーベル賞を手に入れる、これこそトランプ大統領が抱く野望ではないだろうか。(Ψ)

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。