M.K通信 (58)正面突破

朝鮮労働党中央委員会第7期第5回全員会議(2019年12月28日~31日)で朝鮮の体制崩壊を執拗に追及する米国の悪辣で変わらない対朝鮮敵対政策に打ち勝つための「正面突破戦」を展開することが決まった。

この「正面突破戦」は、朝鮮が予告してきた「新しい道」であり、朝米共同声明を踏みにじり「新しい計算法」を示さない米国に対応する朝鮮の戦略的選択だ。

米国は「正面突破戦」の意味を理解できないようで、未練がましく「持続的な非核化対話」を云々し、韓国統一部は「米国との対話中止を宣言しなかったことを評価」するなどと、気の抜けたサイダーのようなコメントを発している。

金正恩委員長は会議で「米国の本心は対話と協商の看板を掲げてああでもないこうでもない、と曖昧な態度を取り続け自からの政治的・外交的利益をむさぼると同時に、制裁を引き続き維持して我々の力を次第に消耗、弱体化させることにある」と指摘、「対話を云々しながらも朝鮮を完全に窒息させ、圧殺するための挑発的な政治的・軍事的・経済的悪巧みをさらに露骨にしているのが白昼強盗である米国の二重的振る舞いである」と断罪した。 また金委員長は、朝鮮は破廉恥な米国が朝米対話を不純な目的の実現に悪用することを絶対に許さず、今までわが人民がなめた苦痛と抑制された発展の代価を奇麗に全部払わせるための衝撃的な実際行動に移ると述べている。

「正面突破戦」はこのような朝鮮側の判断と認識に基づいて打ち出されたもので、米国が望む「持続的な非核化対話」の余地はない。 シンガポール首脳会談以来続いてきた非核化を巡る朝米交渉に終止符が打たれた。 これは「最大限の圧迫」を武器に、朝鮮に一方的非核化をせまり武装解除しようとしたトランプ政権の狙いが破綻したことを意味する。 2017年「核弾頭搭載のICBMで米国を危険にさらす能力を保有させること」を阻止(ポンペオ国務長官、2017年8月13日)できなかったことに続く米国の敗北だ。

朝鮮が国家核戦力を完成させるまでの攻防を第1ラウンド、シンガポール首脳会談から昨年末までの「最大限の圧迫」と非核化攻防を第2ラウンドとするなら、朝鮮の「正面突破戦」宣言をゴングに第3ラウンドが始まったと言えそうだ。

金正恩委員長は党全員会議で、「朝米対決は今日になって、自力更生と制裁との対決に圧縮されて明白な対決の図を描いて」いるとしながら、米国との対立は長期に及ぶとの認識を示し、「正面突破戦」の目的が「敵対勢力の制裁圧力を無力化させ、社会主義建設の新しい活路を開く」ことにあると指摘している。 また金正恩委員長は「正面突破戦」で「基本戦線は経済戦線」であり、「正面突破戦で必ず勝利するには強力な政治的・外交的・軍事的保証がなければならない」と述べ、経済、政治外交、軍事に渡る具体的課題を示した。

「労働新聞」は3日付け社説で「どのような突風が吹き荒れてもわれわれの力、われわれ式に誇らしく主体革命偉業勝利の活路を開き社会主義強国の遠大な抱負と理想をより早く実現しようとするわが党の鉄の信念と意志が脈打っている」と、「正面突破戦」が朝鮮の揺るぎない決意をに基づいた路線であることを強調した。

自力富強、自力繁栄への自信と信念に基づく「正面突破戦」を展開することを決めたこと自体が、米国の「最大限の圧迫」を完全に無力化させるものだ。 もはや「最大限の圧迫」は朝鮮に一方的非核化を迫るカードとして機能しない。 金正恩委員長が全員会議で「米国の本音を暴いた今になってまで米国の制裁の解除などに拘りいくらかの期待のようなものを持って躊躇する必要は一つもなく、米国が対朝鮮敵視政策を最後まで追求するなら朝鮮半島の非核化は永遠にない」ということ、「米国の対朝鮮敵視が撤回され朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制が構築されるまで、国家安全のために必須で先決的な戦略兵器の開発を中断することなく滞りなく進行していく」ことを断固として宣言した事実を見れば明らかだ。

昨年「最大限の制裁」下であったにもかかわらず、三池淵での膨大な都市建設、陽徳温泉リゾートの完成などに象徴される驚異的ともいえる経済成長は自立繁栄への自信を裏付ける根拠だ。 禁油制裁以来米国が待ち焦がれる経済の疲弊と混乱はこれからも見ることはあるまい。 時間の経過とともに米国は制裁が非核化を強要するカードとして機能しないことを身をもって知ることになろう。

また米国は、ロシア、中国とともに米国本土に対する核攻撃能力をすでに保有した朝鮮の戦略兵器と核抑止力の増強に直面することになる。

「守ってくれる相手もいない公約に我々がこれ以上一方的に縛られている根拠がなくなったし、これは世界的な核軍縮と拡散防止のための我々の努力にも水を差している」

「世界は遠からず、朝鮮民主主義人民共和国が保有することになる新しい戦略兵器を目撃することになるであろう」

「米国による核脅威を制圧し、我々の長期的な安全を裏付けられる強力な核抑止力の経常的動員態勢を恒常的に維持する」

「抑止力強化の幅と深度は米国の今後の対朝鮮立場によって上向き調整される」

これらの指摘は、朝鮮が実質的に維持してきた核凍結の解除を意味し、戦略兵器と核抑止力を一層強化し、すでに手にしている相互確証破壊能力を高度化することにつながる。

戦略兵器と核抑止力の増強は、朝鮮の核保有を既成事実化してその戦略的地位を高めることになろう。

対外事業部門、外交部門においては「わが国家の戦略的地位と位相に依拠して、大国的姿勢で外交戦、策略戦を自信をもって展開しなければならない。 わが共和国の尊厳と生存権を侵害する行為に対しては即時強力な打撃を与えなければならない」(「労働新聞」3日付け社説)との課題を示している。 米国の敵対政策が続く状況は「核軍縮と拡散防止のための我々の努力にも水を差している」との指摘と合わせて考えれば、朝鮮の外交攻勢が核保有国の立場で全面的に展開されることになろうことは想像に難くない。

ポンペオ国務長官は7日、国務省で非核化交渉に「希望的」だと述べた。 この寝言のような発言は、トランプ政権が「正面突破戦」に当惑し苦慮していることを示している。 朝鮮の新たな戦略兵器と関連して、「レッドライン」を越えれば「トランプ大統領の怒りを招く」などと恫喝していることも同様で、トランプ政権の無為無策の裏返しに過ぎない。 「レッドライン」を云々し越えれば軍事攻撃を免れないかのような雰囲気を作り出し賢明にけん制したにもかかわらず、水爆に続きICBM実験を阻止できなかった2017年の攻防を忘れてしまったようだ。

新たな戦略兵器は朝鮮が必要だと判断した時点で見ることになる。 犬の遠吠えのような恫喝では戦略兵器の実験を止めることはできず、非核化交渉に「希望的」だとするポンペオ発言がその場しのぎの虚言であることが実証されるのは時間の問題だ。

米韓日の当局、専門家、マスコミは朝鮮の「新しい道」に戸惑い混乱しているようだ。

朝鮮の「正面突破戦」をどう理解し、あれこれ分析評価するのは米韓日強硬派の自由だ。 ただ朝鮮を「後進国」扱いしながら、朝鮮のよる核兵器及びICBM開発を不可能視し、いまだにさして難しくもない再突入技術を習得しているかは疑問、などとの主張がいかに滑稽に映っているのか自覚したほうが良さそうだ。 同様に「正面突破戦」に対する誹謗中傷も的外れだ。 朝鮮に対する米韓日のプロパガンダは日々生命力を失いつつある。

ゴングが鳴った第3ラウンドでも米国の敗北は必至だ。(M.K

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。