有言実行を願う

コリョ・ジャーナル
韓国の文在寅大統領が14日の年頭記者会見で「朝米対話を見守るばかりではなく、南北関係を発展させるべき」と言及、南北協力を推進することによって朝米対話を後押しするだけでなく、朝鮮に対する制裁の一部免除や例外措置の承認に対する国際的支持も得られるだろうとの見解を示した。

これは韓国側の対朝鮮政策の転換を示すものと受け取れる。

文大統領は7日の新年演説でも、「平和統一の意志を誓う合同行事をはじめ、金正恩委員長の答礼訪問のための環境が一日も早く整うよう南北が共に努力することを望む」と述べ、南北関係の再稼働を呼掛けた。

2018年9月の「平壌共同宣言」には金正恩国務委員長が「近い時期に」ソウルを訪問すると明示されており、文大統領はそれが「2018年中」だとの認識を示していた。 だが、金国務委員長の訪韓は実現しなかった。

何故か? それは韓国側が民族内部問題であり「民族自主」の立場で乗り越えるべき南北関係を朝米関係に帰属させ責任を放棄してしまったからに他ならない。

文大統領は「この1年間、南北協力で大きな進展を成し遂げられなかったことは残念」とし、「朝米対話が本格化したことで朝米対話を優先したのは事実で、朝米対話が成功すれば南北協力の扉がより早く、より広く開かれると期待したため」と語ったが、この他力本願の姿勢こそが北側の不信と不興を買った。

文大統領は「朝米対話が膠着するなか南北関係の後退まで懸念される今、朝米対話の成功のため努力するとともに南北協力を一層強化していく現実的な方策を模索する必要性がさらに切実に求められている」と強調、「南北の鉄道・道路連結事業を実現できる現実的な方策を南北が見つければ、国際的な協力につながるだけでなく南北の観光再開と北の観光活性化にも大きな後押しとなる」と述べ、金国務委員長と「幾度も会って継続して対話する用意がある」との意志表明した。

また、開城工業団地と金剛山観光再開に向けた努力も続けていくとの考えを示した。

これに伴い、統一部や外交部などの姿勢にも変化が見える。

統一部の金錬鉄長官は14日、宗教・社会団体トップとの会合で「新年を迎え、政府は朝米関係が解決されるまで待つよりも、南北関係の改善に向けてできる措置を取っていく計画」だと語った。 そこには、2019年2月のハノイ朝米首脳会談の不発以降、「朝米対話に集中する」という名分のもとに南北協力推進を朝米交渉の帰属案件にしてしまい、事実上責任放棄した韓国政府の「戦略」=姿勢がむしろ南北関係悪化を招いたとの反省があると思われる。

問題は、朝鮮側がこれに応じるかどうかだ。 朝鮮は昨年すでに韓国の「限界」を充分なほど痛感させられている。 その上で、今年は米国との闘いに専念するとしている。 そこに「南北関係」への言及は一言もない。

事実、金国務委員長に送る米大統領の誕生日祝いの挨拶を巡り、韓国が朝鮮側に緊急伝達するとした事に対し「我々は米大統領の親書で直接伝達された状態である」「南朝鮮当局は、このような状況で我々が何らかの誕生日祝いの挨拶を伝達されたとして誰かのようにこの上なく有り難く思って対話に復帰するという儚い夢を見るのではなく、介入して元金も取れない馬鹿の境遇になるのを願わないならば自重している方がよかろう」(11日、朝鮮外務省 金桂官顧問)と指摘している。

気になるのは、韓国側が未だ「米国とは伝統的な同盟関係をさらに高い水準に発展させ、朝鮮半島の平和プロセスの完成のため共に努力していく」としていることだ。

朝鮮は今年の対南政策についてまだ何も発表していない。 南北関係改善に対する南側の意志表明が本物であるならば、先ずは具体的な提案なり行動で示すべきだろう。(Ψ

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。