M.K通信 (63)感染症を反朝鮮宣伝に利用する「悪魔化」プロパガンダ

「数百人、そしておそらくは数千人の、いまだ報告されていない新型ウイルス感染者がいる可能性がある」とした米下院議員の発言が3月初に報じられたが、新型コロナウィルス感染者を隠蔽しているのは朝鮮ではなく米国の方だ。

朝鮮は、米国のように今年の末に大統領選挙を控えているわけでもなく、共和、民主の2大政党による激しい政争もない。

また、既に数十か国に広がっている新型コロナが国内に入り込んだからと言って朝鮮の国家的威信にかかわる性格の問題でもなく、ウィルス感染者を隠蔽する理由はないのだ。 確定診断者が出ればWHOに報告し発表すればよいだけの話だ。 もし感染者がでれば早々にWHOと協議し最新の知見を得て治療、感染拡大を阻止しなければならないのではないか。 感染者がいるなら公表したほうが朝鮮にとっては良いに決まっている。

にも関わらず、米国は執拗に感染者が出ているのに隠蔽してるかのようなプロパガンダを繰り返しており、その尻を「朝・中・東」と言われる韓国の親米保守系紙、日本の一部マスコミと下請けライターが追っている。

「感染者がいるのではないか?」と疑問を呈する形から「脆弱な医療体制」と「後進性」を印象付けようとする体制非難にエスカレート、最近に至っては「集団感染」と「地域封鎖」をでっち上げるにいたっている。

「脆弱な医療体制」とは何を意味しているのか、書いているライターが自覚しているのか疑問だ。

新型コロナウィルスは、感染速度が速く、潜伏期間も非確定的で、正確な感染経路に対する解明もなされていない。 また予防薬、ワクチンなどが開発されているわけではない。 このような状況で、新型コロナウィルスに対して「医療が脆弱」なのは、朝鮮だけではなく、感染が広がる全世界の「医療が脆弱」というのが正解ではないのか。

このため、現時点では、感染者を隔離治療(対症療法)する一方、濃厚接触を避ける様々な措置を講じる以外に方法がないのが現実ではないのか。

朝鮮では新型コロナウィルス発生初期にその危険性を見抜き迅速に国境を封鎖、国内では中央と地方に非常防疫体制を構築し、考えうる感染経路をすべて絶つと同時に、それでも感染者が発生した場合に備え、抗ウィルス剤などの大量生産に入るなど徹底した防疫体制を取ってきた。

正体不明の伝染病を封じ込めるには感染源と思しき所を封鎖し、感染した人々を隔離し拡大を防ぐのは、防疫のイロハではないか。

朝鮮で疑いのある患者を隔離し医学的監視を行っていることは、感染拡大を防ぐための定石だろう。 どこかのテレビ局の番組でPCR検査で約7割を確定診断できると仮定して話を進めていた。 PCR検査でも陽性なのに陰性と診断されることが避けられないのが現実。 100%確定診断できないばかりか、確定診断率の割合ですらはっきりしない。 このため朝鮮では、PCR検査に加え検便も行っている。 感染患者の便からウィルスが出たと報告されいるためだ。 また隔離期間を30日としているのも、潜伏期間が20日を超えた例が報告されたためだ。

このように朝鮮では、中国はじめ感染症と戦う各国からの最新の知見を即座に反映し徹底した防疫を行っている。 感染者がまだ一人も出ていない理由だ。

このように新型コロナウィルスの前にはどの国の医療体制も脆弱で、朝鮮はこのことをふまえ徹底した防疫体制を敷いている。 「医療が脆弱」だから感染者がいるはずで、感染が広がれば「体制の危機に直面する」などのプロパガンダがいかに荒唐無稽であるのかご理解いただけると思う。

自由アジア放送(RFA)は、米国の利益のためにプロパガンダを行うアジア向けの国営放送。 公正客観なマスコミではなく、米国の利益のためならでっち上げもためらわない放送機関であること忘れてはならない。

RFAが、朝鮮の平北道薪島郡に新型コロナウィルスに感染した「患者が集団発生し、隔離地域に指定」と報じたのは典型的なでっち上げ謀略報道。 RFAが薪島郡を集団発生した地域に選んだのは、中国に近い地理的条件、朝鮮の歴代指導者が現地指導した葦の産地であるため。 ここでとれた葦を原料に教科書用の紙を生産していることからもわかるように自立経済を象徴する場所でもある。 どうやらRFAは中国と近く感染する条件があるように見えるとともに、歴代の指導者が現地指導した自立経済の象徴になる地域で、集団感染が発生したことにして朝鮮を貶める効果を狙ったようだ。

このRFA報道を受け、元M社の北京特派員Nは薪島郡が中国との密貿易が盛んな地域であるため集団感染が発生したとでっち上げるに至っている。 朝鮮のことを何も知らない素人だけが作れる作文だ。 というのも、歴代の指導者が現地指導した葦の産地での密貿易など絶対と言っていいほど有り得ないからだ。 朝鮮を少しでも知る人ならだれでも知っているこの事実を、Nは想像もできなかったようだ。 ちなみにこのNは朝鮮に取材のため入国したことがあるのだが、朝鮮訪問時に行ったことがない地域のルポ記事を書いてNを受け入れた朝鮮の窓口を仰天させた前歴の持ち主であることを付け加えておく。

Nとともに、元A社のソウル特派員Mについても一言指摘しておこう。

Mは、朝鮮にPCR検査機があるのは烽火診療所だけで、朝鮮の病院には抗生剤すらないと書き、「脆弱な医療」の根拠にしている。 Mも十年以上前に平壌に取材で入ったことがあるが、朝鮮の病院事情を取材したことは一度もなく知る立場にない。 烽火云々は聞きかじった中途半端な知識をもとにした作文か、またはソウルの情報機関から吹き込まれた情報に基づいたものであろうことは想像に難くない。 なぜなら、現在の朝鮮の病院事情からはあまりにもかけ離れていて、Mの平壌時間は20年以上前に止まっているようだからだ。

米日韓による朝鮮「悪魔化」プロパガンダは感染症に限ったことではなく、機会あるたびに日常的に行われており、信じるに足りない。 実に場当たり的でご都合主義に満ちている。

一つだけ例を挙げるが、朝鮮のGDPは日本の島根県とほぼ同じだというプロパガンダだ。 朝鮮を世界の「最貧国」に描写することに目的があると思われるが、島根県程度のGDPしかない国が、どうしたら水爆とICBMを作り、潜水艦とSLBMまで作って実験することができるのか? さらに、人工衛星打ち上げロケットを自前で作り衛星を打ちあげ運用することが可能なのか、という素朴な疑問には絶対に答えようとしない。また、朝鮮には衛星を自力で打ち上げる技術があるが韓国にはその技術がなく他国に依存せざるを得ない事実には触れようともしない。

枚挙にいとまがなく、場当たり的で矛盾に満ちた朝鮮「悪魔化」プロパガンダに騙されてはならない。 朝鮮「悪魔化」プロパガンダに翻弄されれば、朝鮮半島情勢を見誤ることになる。(M.K

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。