M.K通信 (77)米国が「非核化交渉再開」を執拗に迫る五つの理由

米国が朝鮮に「非核化交渉再開」を執拗に迫っている。

朝鮮半島の非核化のための交渉は、米国が昨年2月ハノイ会談で「ビッグディール」を唱え、朝鮮の体制崩壊を露骨に追求したことで、昨年10月スウェーデンで行われた実務交渉を最後に破綻した。

にもかかわらずトランプ政権は、今年に入って朝鮮に新書を2回も送るなど、様々な手段を総動員して「非核化交渉再開」を迫っている。

超大国を自負する米国が、面子も考えず、へりくだり哀願してまで交渉再開を繰り返し求めている理由はどこにあるのか?

忘れられない成功体験

イラク、リビアでの成功体験を忘れられず、交渉を通じて武装解除を即して体制崩壊への条件を整えることが、第一の理由と言えるだろう。

イラクもリビアも、交渉の過程で米国の甘言に翻弄され大量破壊兵器を自ら解体するかと思えば、建設中の核施設を言うがままに差し出し、米国の武力侵略に抵抗する術もなく崩壊した。 トランプ大統領が「北朝鮮の『最終的かつ完全に検証された非核化(FFVD)』のために、引き続き努力していかなければならない」(国際原子力機構IAEA定期総会に送った声明、21日)と朝鮮の一方的非核化を迫る一方、「非核化すれば明るい未来が保障される」とうそぶいているのは、米国が朝鮮で「リビアモデル」の再現を追求していることを示している。

しかし、柳の下に何時も泥鰌がいるわけではない。 朝鮮で「リビアモデル」の追求するのは愚かなことで、米国は、二匹目の泥鰌がいないことを思い知ることになろう。

朝鮮核保有の既成事実化

二つ目の理由は、シンガポール首脳会談を前に朝鮮側がとった核実験およびICBM実験の中止など、いわゆる「核凍結」の水準に朝鮮を縛り付けておくためだ。

トランプ大統領が、朝鮮側が進んでとったこれらの先制的措置を、自らの治績として触れ回っていることは周知の事実。

朝鮮側は、重ねて表明しているように、守るべき相手もいない約束にとらわれず、核抑止力を強化する意志を示しており、目に見える形で実行されれば、トランプ大統領の治績は一朝にして吹き飛ぶばかりか、朝鮮の核開発を止められらなかった責を追うことになる。

トランプ政権が必死になって、交渉を続けその枠に朝鮮を縛り付けて置かなければならない理由だ。

三つ目の理由は、「非核化交渉」が行われず朝鮮の核武力増強が進めば、朝鮮の核保有は既成事実化されるためだ。 時間は決して米国に有利に働かない。 時間の経過は核保有の既成事実化と比例している。

米国が敵対政策を最後まで追求するなら「朝鮮半島の非核化は永遠にない」というのが朝鮮の姿勢だ。 また、核戦力が積み上げれるほどに非核化が遠のくのも避けられない。

米国が「非核化交渉再開」にこだわる四つ目の理由は、朝鮮に対する圧力手段がことごとく無力化しているためだ。

無力化した圧力手段

M.K通信(76)で指摘したように、核の脅威を中心に据えた軍事的圧力は、朝鮮の「国家核戦力の完成」で無力化した。 「国家核戦力の完成」が意味するところは、ICBMに水爆を備えた米本土を攻撃できる核戦力ということだ。

朝鮮は戦争を望まないが、戦争を恐れない。 一貫した立場だ。 ボブ・ウッドワードの新刊「激怒(Rage)」で「核兵器80発使用」を云々する非現実的下りが話題になったが、米国による平壌に対する核攻撃は、ワシントンが核の炎で焼かれることを前提にしなければできることではない。 去る6月20日、中露朝鮮大使館は報道文を発表して、「朝鮮半島での戦争の開始は、米国と呼ばれる今ひとつの帝国の週末を告げる特別な事件として人類の歴史に記録されるだろう」と指摘した。

米国が、自分たちは安全地帯にいて、他国をその地で戦火に巻き込み侵略する時代は終わった。 米国が朝鮮半島でことを構えるなら米本土が悲惨な戦場になることを覚悟しなければならない。 米国の軍事的圧力で朝鮮を威嚇して非核化に追い込めると考えるならそれほど愚かなことはない。

朝鮮は米国による史上最大の経済制裁を正面突破で打破すると宣言していることは周知の事実だ。 金與正党第1副部長は去る7月10日に発表した談話の中で「我々は制裁の解除問題を米国との協商議題から完全に捨ててしまった」と指摘した。 この指摘は、経済制裁が朝鮮に対する圧力手段としてこれ以上機能しえないことを示している。

中国を巻き込み禁輸制裁を実現したことで「史上最大」を云々したが、効果は極めて限定的で朝鮮の経済はプラス成長を続けている。

朝鮮は資源国で工業国だ。 人工衛星と打ち上げロケットも、ICBMも水爆も、ICBMと精密打撃短距離誘導弾も、すべて自分の技術で開発したものである。 自力更生の精神と積み上げた技術を発展させることによって制裁を突破するというのが「正面突破戦」だ。 経済制裁は圧力の手段足りえない。

形骸化するNPT

五つ目の理由は、朝鮮の核保有を放置すればNPTの形骸化をより促進することになるためだ。

NPTは核保有国の核軍縮、核兵器保有国による非核国に対する核威嚇の禁止、非核国の原子力の平和利用の保障を前提に成り立っている。

しかし、核軍縮はまったく進まず、米国による非核国に対する核威嚇と侵略が横行しているのが現実だ。 このような状況に多くの非核国は納得しておらず、核軍縮を強く求めている。 非核国の核軍縮要求に応じず米国の横暴を放置するなら、NPTに存在意義はない。

朝鮮が米国の核の脅威に対抗して核兵器を開発したのには、NPTの無力も要因の一つになっている。 朝鮮がNPTから脱退したのは、米国の核威嚇に対抗する朝鮮の行動に助けとなるどころか、妨害する役割しか果たせなかったためだ。 NPTがその設立精神に反して、米国が朝鮮に対して行ったように、米国による核の横暴を放置するなら存在価値はない。

朝鮮の核保有は堕落したNPTに対する警告で、形骸化を促進させる決定的要因になることは避けられない。 NPTとIAEAの機能不全は米国の核支配を弱体化させる重大な要因になろう。

米国の執拗な「非核化交渉再開」要求にも関わらず、朝鮮は対朝鮮敵対政策の撤回を正面から求め、撤回なしに朝米対話の再開はないと断言している。

金正恩委員長は昨年末の党会議で、「米国の対朝鮮敵視が撤回され朝鮮半島の恒久的であり強固な平和体制が構築されるまで、国家安全のために必須で先決的な戦略兵器の開発を中断することなく滞りなく進行していく」と断固宣言した。

「非核化交渉再開」を云々する時は過ぎ去った。 朝鮮半島の核問題は、米国の敵対政策撤回が唯一無二の解決策だ。

朝鮮を敵視して、体制崩壊を狙う米国の旧態依然とした朝鮮半島政策はすでに破綻している。(M.K

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。