不純な思惑透ける「IAEA報告書」

コリョ・ジャーナル

国際原子力機関(IAEA)が21日、朝鮮が非核化に合意した後も核活動停止のいかなる兆候も見せていないとする報告書を公表したという。

報告書では「北朝鮮は核計画を継続、発展させており、北朝鮮による関連の声明は深刻な懸念を引き起こしている」とした。

しかしこれはおかしい。 IAEAは2009年に監視員を国外追放されて以降、朝鮮国内での直接的な監視査察を行えておらず、公開情報や衛星写真などでしか確認作業を行えていないからだ。

「北朝鮮での検証作業を実施できない状態が続いているため、同国の核計画に関する情報が限定されており」と、IAEA自体、確固たる根拠がないことを認めている。 にも拘らず、「朝鮮半島の非核化」をめぐり朝米間で駆け引きをしているこのタイミングで報告書を発表したのは、甚だ恣意的、意図的であると言わざるを得ない。

実のところ、IAEAにはいわゆる「朝鮮の非核化」に取り組む権限はない。 核軍縮分野の権限を有していないからだ。

これに関して、在ウィーン国際機関のロシア常駐代表を務めるミハイル・ウリヤノフ氏は「核兵器の不拡散に関する条約の規定を覚えておくことが重要だ。同条約の第1条は、核兵器国に対し核兵器を誰にも移譲しないことを義務付けており、第2条では、非核兵器国は核兵器を保有したり、それに関係してはならないとされている。したがって我々は、核軍縮に携わることができるのは、ロシア、米国、フランス、英国、中国の核保有国のみだということに立脚している。IAEAはその権限に核軍縮の任務を持つ機関ではないため、これに加わることはできない」と証言している。

すなわち、IAEAは本来、原子力が民間利用から軍事 利用に転用されることを防止するために各国の平和的な原子力計画を管理する機関であり、中立公正であらねばならない。 よって、ある一定の国の思惑に沿って、他国の軍事施設を無作為に核査察するような行為を行ってはならないし、そのような権限も有さない。

しかしながら今回の報告書の発表は、現事務局長が日本人の天野之弥氏であるということを考えると、決して偶然とは言えないだろう。

天野事務局長は7月5日に河野外相と会談、河野外相から「北朝鮮の非核化の検証においてIAEAが中心的役割を果たし、その知見、経験が最大限に活用されるべき」「IAEAが北朝鮮における監視・検証活動を再開する場合、日本としても応分の支援を行う用意がある」との方針を伝達されている。

これは、朝米交渉に何とか関与したいという日本政府の思惑が透けてみえるもの。 それを踏まえた上で、天野事務局長は日本政府の思惑を汲み取って、今回の報告書の公表に踏み切ったものと推測される。

いくら日本が横槍を入れようとしても、「朝鮮半島の非核化」は当事国である朝鮮とアメリカにしか解決ができない。 何故なら、核保有国同士の軍縮問題であり、朝鮮半島から核兵器を無くそうというものなのだから。

原子力発電などの平和利用を管理・促進するのがIAEAの役目。 朝米交渉に口を挟むべきではない。(Ψ)

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。