「虎穴」に入らずんば

コリョ・ジャーナル

日本のNGO「KOREAこどもキャンペーン」(東京)などが主催する日本と朝鮮の大学生の交流イベントが8月下旬に平壌で行われ、TBSの「NEWS23」でその様子が先頃放送された。

東京大や立命館大などから6名が訪朝、平壌外国語大で日本語を専攻する学生8名と8月22日から計3日間の日程で交流したという。

朝米首脳会談の開催など朝鮮半島を取り巻く国際情勢が大きく変ろうとするさなか、日朝双方の学生たちは植民地支配の過去清算や拉致や核開発問題など、両国間の様々なテーマで意見交換をし、互いの立場の違いも率直に語り合いながら日朝関係の改善を望んだ。

わずか3日という限られた時間に、日朝の青春たちは互いに直ぐに打ち解けて本音を語り合い、お互いが相手の事を知らなすぎる事、それがボトルネックだと言うことも知った。 これから向かい合って関係を構築・改善していこうとする時、お互いが相手の事を知ることは非常に大切なことだ。

現在、日本と朝鮮には国交がない。

先の大戦での日本の敗戦で日本の植民地支配から解放された朝鮮半島は、外勢の思惑により南北に引き裂かれ、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)と大韓民国(韓国)の二つの国家体制に分断されることになった。

アメリカの意を汲んだ日本は韓国と国交樹立したが、朝鮮に対しては一貫して敵対視を続けた。 時の政権が「拉致、核、ミサイル」の三点セットを掲げ「北朝鮮の脅威」を率先して煽り、政権浮揚に利用する状況下で、その意を忖度する日本のメディアは昼夜「北朝鮮悪魔化」に余念がない。 それに影響される日本国民の対朝鮮感情は過去最悪の状態だといえる。

しかしそんな中でも、将来・未来を見据えて朝鮮を知ろうと努力する日本の人々もいる。 個人の資格で観光する人は増えているし、民間団体・親善団体も定期的に朝鮮への訪問を続けて友好と連帯を地道に深めている。 先の学生交流などの活動もある。

民間レベルでは「朝鮮を知ろう」と努力が行われる中、本来、率先してそれを行わなければいけないはずの政治家、国会議員の腰は重い。

アントニオ猪木参議院議員(無所属)が朝鮮の建国節70周年祝賀行事に招待されて訪朝したぐらいのものだろう。

かえって、菅官房長官などは5日の記者会見で「政府は従来、国民に北朝鮮への渡航自粛を要請している。議員にも要請を踏まえ適切に対応してほしいと伝えている」と述べ、猪木氏の訪朝に反対しているくらいだ。 政府レベルでのパイプが断絶して久しい今、朝鮮と独自のパイプと人脈を持つ猪木氏を「特使」として利用する方法もあるのにも関わらずだ。 それでいて、口を開けば「政府としても情報収集している」との繰り返し。 これでは埒が明かない。

国会内には「日朝国交正常化推進議員連盟」もある。 これがしっかりと議員外交を継続していれば少なくとも今の様な有様にはなっていない。 しかし日朝議連はここ10年間「休眠状態」にあり、今年6月やっと再始動し始めたばかりだ。

議連には、自民、公明、立憲民主、国民民主、維新、共産、社民の議員が名を連ねる。 つまり超党派だ。

議連関係者は「2008年ごろまでは議連は活発に活動していました。 しかし、官邸サイドから『政府に任せてくれ』と言われ、外交の専権事項は政府ですから、それに配慮する形で見守ってきた。この間、北朝鮮がミサイル発射や核実験を繰り返し国会でも制裁を決議するなど、議員外交が動かしにくかったこともあります。 ところが、4月27日の南北首脳会談で、『北はいつでも日本と対話の用意がある』とメッセージを出してきた。 これを重く受け止め、日本政府はすぐさま反応すべきなのに動かない。 そこで、政府間のチャンネルがないのなら議員外交で風穴をあけなければならない、となった訳です」(日刊ゲンダイ)という。

ならば今必要なのは、ほんの少しだけ「勇気」を出して、先ずは直の朝鮮を見てくることではないだろうか。 動きもせずに「実は情報がないんだよ」などと言わずに。 日本が躊躇しても留まっても世界は動いていく。(Ψ)

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。