M.K通信 (95)文在寅政権の実態を伴わない虚勢と卑屈な振る舞い

文在寅政権が成功したとして、大々的に広報している韓国のSLBMは地上ミサイルを水中を通過させて水面上に押し出した後に点火させて飛ばしたもので、SLBMと言える代物ではないことが明らかになった。

既報のように、張昌河朝鮮国防科学院院長は20日、韓国が成功したと胸を張ったSLBMを具体的に分析した「南朝鮮の不手際な水中発射弾道ミサイル」と題した文を発表して、「ただ地上ミサイルを、水中を通過させて水面上に押し出した後に点火させて飛ばすからといって、自己の形態や機能を完備した水中発射弾道ミサイルと言えるのではない」と指摘したのである。 張昌河院長の指摘に対して青瓦台と専門家は沈黙したままだ。

SLBMではない

張昌河院長の指摘は専門的知見に基づいたもので、韓国のSLBMと発表されたものを客観的に、技術的に詳しく分析しており注目に値する。 今まで朝鮮が試射した数々のミサイルに対する米韓当局と専門家の根拠のない誹謗中傷とは根本的に異なる。

張昌河院長指摘した要点は次のようなものだ。

・典型的な地対地戦術弾道ミサイルの構造と形態を備えており、水中兵器とは程遠い出来損ないの兵器。

・ミサイルの外形は、長さ6メートル足らずで直径800ミリメートル未満と推算され、噴出火炎の大きさから見て射程500キロメートル未満の戦術弾道ミサイルと判断

・水中から出た後の弾頭部覆いの分離方式を見ると、インドの戦術級SLBMであるK15を模倣

・水中から出た後、ミサイルのエンジンが点火する時まで姿勢が傾かなかったし、水柱と水付着量が小さいのを見れば、発射深度が非常に浅い位置で発射、作戦機動中の発射ではなく、停止状態、または微速機動時に発射したことが難なく分かる。

・SLBMで基本である水中発射において解決すべき複雑な流体流れ解析をはじめとする核心的な水中発射技術をまだ完成していないということを示す。

・ミサイル発射場面を見れば、発射体の飛行の際、制御および安定性の保障のために発射体に折りたたみ式羽根をつけたし、姿勢制御を空気舵やガス舵でするように見える。

・数百キロメートル程度の射程とせいぜい1~2トンの常用弾頭しか搭載できず、在来式潜水艦で運用されるということから、このミサイルは無意味な「自慢用」「自己慰安用」にしかならないー等々。

公開された写真や資料などを基にしたもので、専門的知見に溢れ政治的評論や中傷とは一線を画す分析であることがわかる。

「今回、南朝鮮が公開して大きく宣伝したミサイルが水中発射弾道ミサイルであると見れば、初歩的な最初の歩み段階の水準にすぎない」という評価はほぼ正確であるとみられる。 青瓦台と韓国軍部、政府、専門家が意味のあるコメントをできずに口をつぐんでいることは偶然ではあるまい。

世界で七番目?

 文在寅大統領と青瓦台はこのSLBMと呼ぶにはあまりにもお粗末なこの兵器を持って「世界で7番目」の「SLBM保有国になった」と胸を張っている。

恥ずかしくもないのだろうか?

中ロなど独自でSLBMを開発した数少ない国の専門家なら、張昌河朝鮮国防科学院院長と同様の分析をするだろう。 よちよち歩きの未熟な技術水準は専門家がみれば一目瞭然なのに、だ。

文在寅大統領は、2016年8月と2019年10月にそれぞれ「北極星1」と「北極星3」の試射を成功させた朝鮮のSLBMを認めたくないようだ。 「SLBM保有国になった」ということ自体が強弁だが、朝鮮を飛ばして「7番目」にこだわるのはそのためだろう。

米国は朝鮮のSLBMに警戒感を隠していない。

2019年10月25日、つまり朝鮮が「北極星3」の打ち上げ実験をおこなってから23日後、バージニア州アーリントンで開かれた国防記者懇談会でのロバート・バーク米海軍参謀次長は、「北朝鮮の 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の能力は米国本土に対する直接的脅威になるgame changer(ゲームチェンジャー、ゲームの流れを一気に変える要因)になりえる」、「北の能力を過小評価する愚を犯してはならない」と強調、警戒心を露わにした。 また同次長は、「水中発射台から発射されたものとみられる」との米統合参謀本部のライダー報道官発言に関連する質問を「定かでなない」と一蹴、「北のSLBM開発能力を綿密に注視しなければならない」と述べている。

10月2日に試験発射された北朝鮮のSLBM「北極星3」に対する米韓日当局、専門家、マスコミの過小評価に、米海軍の当事者が警鐘を鳴らしたのである。 ロバート・バーク米海軍参謀次長の発言は「水中発射台から発射」を云々したライダー報道官発言を否定したものだが、プロパガンダの次元で記者発表を行う報道官発言に対して、実戦を想定して分析する参謀次長は宣伝次元で発言するわけにはいかない、ということだろう。

文在寅政権が米海軍参謀次長発言を無視して、ライダー報道官の発表に基づき、朝鮮はSLBMを完成していないと主張するのは自由だが、ご都合主義が甚だしいプロパガンダとの非難を免れることはできないのではないか。

軍事保護領の悲哀

韓国大統領による“国軍の統帥権”とは名ばかりで、韓国軍の作戦指揮権は米軍にあるだけではなく、国防も米国に全面依存する韓国。米国依存に対する国民のまなざしは年々厳しくなっている中で、アフガニスタンの傀儡政権が一朝にして崩れ去った衝撃は大きい。

自主を掲げて米国と渡り合う朝鮮を前に、米国の属国に等しい韓国はあまりにも対照的で、文在寅政権としては実態のない「自主国防」を叫びながら、北に対する優位性を無理にでも作り上げなければならなかったのであろう。

衛星の打ち上げ技術ももたないのに、軍事衛星を打ちあげたと発表したまではいいが、後に欧州の通信衛星を買い打ち上げは米国の民間会社に依頼したことが明らかになり、国民の非難を受けたのは遠い昔のことではなく、文在寅政権下でのことだ。 また戦車のエンジン部品の製造技術がなくドイツから輸入しなければならず「自主国防」のスローガンは色あせ、独自開発したとされるK-1自走砲やスリオン(ヘリ)は欠陥だらけで使い物にならず問題になった。

自慢の潜水艦「島山安昌浩」も、ESM、装填装置、電子工学マスト、戦闘管理システム等の核心装備もスペイン、イギリス、フランスなどNATO諸国から買い求めなければならないのが現状だ。

さらに数年前にはドローンタクシーの飛行試験を云々したが、そのドローンが中国から買い求めたもので、韓国には製造能力がないことが明らかになり国民を失笑させた。

米国にすべてを依存する軍事保護領の悲哀の表れで、それを覆い隠すための虚勢は見るに忍びない。 この卑屈で歪んだ振る舞いは文在寅政権下で一層酷くなっているようだ。(M.K

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。